XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ツーリストの視点

shig552006-10-06

キンモクセイの香りが漂う季節になったと思っていたら、ぎんなんの香りも流れてくるこのごろになってしまった。毎日の喧噪に追われ、ふと気が付くと季節の移ろいはとても速く過ぎていく。こんなにも周囲の自然に心が向いていなかった毎日とは何だったのかと愕然とする。

遠方への旅をしてきた。初めてそこへゆく人を案内しての旅だった。目的地が近づくにつれ期待が高まっていく雰囲気が感じられる。到着、一斉に歓声が上がる。初めてその景色、環境に出会うとき感動がある。これまでに見たことのない情景・雰囲気。自身の経験と照らし合わせ新たな体験をする。想像していたことが現実に目の前に展開することの感動。
私はここに来るのは6回目である。最初に来たときには、同じような感動を味わった。何もかもが新鮮で驚き、感嘆した。しかし、今回はそれほどの感情の起伏はなかった。日常の生活と連続したものとして平坦な時間が流れた。あそこに行けばあの景色があり、そこにはあんな状況があると予めわかっているからだろうか。

ツーリストは日常の世界から新たな世界へ行くことで新たな発見をし、刺激を受けることを楽しんでいる。日常との比較の中で見て感じているのだと思う。
毎日の通勤で歩く街の景色はほとんど目に入っていないのかも知れない。日々変化しているはずの景色であるが僅かずつの変わりようで視野に入ってこないようだ。同じ景色であってもツーリストならばその景色に感動し、さまざまな感想が出てくるのだろう。

人の感覚は変化を敏感に捉える。それはいかに素早く危機を回避するかが自己保身の重要な機能だからだ。逆に変化のないものは捨象され、意識にも上らなくなっている。脳の機能が情報処理をするとき、その情報を効率的に整理し処理するためにこのようなアルゴリズムになっているのだと考えられる。当然と言えば当然なのだが、ともすると大切なものが見えなくなってしまうと言う恐れもあるシステムである。