XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

QRPでDX?

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ビューロー経由で得たQSLカード


 私はシンプルな設備でアマチュア無線を楽しんでいる。数ワットの小出力トランシーバーで、アンテナは2階の高さほどに伸展したワイヤーアンテナである。こんな貧弱な装置でも北海道から沖縄、小笠原諸島まで国内の局とは交信できている。当然、伝播コンディションの良くない時には何も聞こえないこともある。
 伝播の状況は複雑で、国内がよく聞こえる時もあれば一部の地域しか聞こえない時もある。電波は電離層と地上の間を反射しながら飛んでいくので、どの高さにどの程度の電子密度の層が出来るかで到達距離が違ってくるのだ。また、伝播する経路によって減衰の状況も異なるので、特にQRPの小電力ではその影響を受けることが大きい。
 遠距離(DX)といっても普段なら北海道や九州の局が強力に入るくらいなのだが、時として海外の局が入感することがある。海外の局にはアンテナフィールドという広大な敷地に数十mの高さに巨大なアンテナ群を設置して、私の出力の数百倍の電力で送信してくる局もあるようだ。そのため、相手の局が聞こえるからと言って私の微弱な電波が相手に届くとは限らない。それでも相手の局が巨大なアンテナ群でこちらの弱い電波を捕まえてくれることがある。

 2020年から今日まで約1年7カ月間の交信記録(ログ)を見直してみた。すると海外の約40局と交信できていた。内訳はアジア側ロシア 14、韓国4、中国1、欧州側ロシア13、オーストラリア3、フィリピン1、スプラトリー諸島1、セルビア1、USA2であった。また、使用した周波数帯は3.5MHz 2、7MHz 18、18MHz 12、21MHz 5、24MHz 1、28MHz 2であった。やはり近隣の国々が多い。また、低い周波数での交信が多い。国内に伝播するのと同じような状況で少し遠距離まで飛んで行ったのだろう。しかし、高い周波数の場合はスポラディックE層と呼ばれる強力な電離層が発生した場合に、遠距離と繋がる場合があるようだ。
 私の場合、国内との交信を楽しむことが主なので、運用時間は日常生活に合わせたものである。そのため伝播状況だけでなく、海外の局の運用時間に合わせることはしていないので交信数が少ないのだ。相手の時間帯を考えて運用すればまた状況は変わるかもしれない。
 小さな設備で海外との交信を楽しむのには無理がある。ある程度の送受信設備が必要なのは当然である。しかし、時には海外の局と交信ができるというスタンスであるならば、こうしたQRPアマチュア無線も楽しめるのではないだろうか。送られてきたQSLカードの巨大なアンテナの写真に感嘆の声を上げながら、掌に乗るようなリグからワイヤーを流れ、空に飛び出していった電波がよくもあそこまで飛んで行ってくれたと感慨にふけるのも一興である。
 数年前から進められてきた新スプリアス基準による規制が「当分の間」延期になるそうだ。自作のQRP機はほとんどお蔵入りと諦めていたのだが、まだ使えるようだ。
 何度も何度も聞き返してもらうような微弱な信号で相手局に迷惑をかけてしまうのだが、自然の営みのなかで電波を使う楽しみを続けたいと思う。