XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

二輪と四輪

shig552010-12-26

 北陸から東北、北海道にかけて雪が舞っているという便りが来ている。等圧線が縦に並び、冬型の気圧配置である。東京では風が冷たいものの日だまりは暖かいこのごろである。クリスマスも過ぎ、年の瀬になっているのだが、なんとなく街の雰囲気が年末になっていないように感じる。これも世界的な不況の影響なのだろうか。

 ずいぶん昔、公道ではなく敷地の中を家にあったバイクに乗ったことがあった。ぐるぐると家の周りを回りギアチェンジやクラッチの使い方を覚えたものだ。しかし、運転免許がとれる年齢になると二輪ではなく四輪の免許をとった。それから数十年、四輪の運転をしてきたのだが、この年齢になって二輪に乗ってみたくなった。
 教習所の教程を検索すると、他の車種の免許を所持していると教程が免除されるようである。一番少ない教程で自動二輪の免許がとれる教習を受けることにする。オートマ限定の普通二輪免許である。
 いよいよ教習が始まったが、二輪と四輪の違いを思い知らされることになる。四輪はブレーキをかけても止まるだけだが、二輪は止まると倒れるのである。止まる前に予め脚を出し、バランスをとって止まらなくてはならない。また、急ハンドルをしても転倒である。教習所では肘と足首、また胴の部分にもプロテクタを着け、ヘルメットをかぶり、手袋をはめなくてはならない。四輪では車体の中で守られている身体が、二輪ではもろに外に晒されるのだ。当たり前のことだが、自分が二輪に乗ってみて実感した。
 そして、教習車は普通自動二輪の免許される最大のものが使われる。400ccの車体は重たいのだ。一度バランスを崩すと持ちこたえるのに大変な力が必要である。転倒させてしまったら起こすのも一苦労だ。教習車は転倒することを想定して周囲にガードパイプが取り付けられ、転倒しても身体が挟まれないように配慮されている。それでも、何度となく車体を倒してしまい、脚には擦り傷がいくつも付いてしまった。骨折のようなけがではないが、慣れないことをするのだから、小さなけがは致し方ない。
 さらに予想外のことがあった。オートマ限定は教習時数は少ないのだが意外な落とし穴があったのだ。ATの場合ギアチェンジはない。アクセルとブレーキ操作だけなので運転は簡単だと思っていた。しかし、平均台スラロームをする場合、低速での速度調整が難しいのだ。MTならクラッチを切ったり繋いだりすることで速度調整ができるが、ATは微妙なアクセル調整が難しい。アクセルを離すとエンジンブレーキが掛かり速度はすぐ落ちてくる。アクセルを入れ過ぎると急加速になる。アクセルを握るのではなく摘むような微妙な調整が必要なのだ。もう一つ、ATは車輪が小さく、ハンドルの下になって見ることができない。MTなら大きな車輪で路面と車輪の関係が把握できる。平均台でバランスをとるとき、MTの方が台との関係がつかめてやりやすい。また、乗車姿勢でもATは椅子に腰掛けるようになり身体を保持するのが難しいが、MTなら大腿部でしっかり車体を挟み込むことで保持できる。この車体と身体の一体感がバランスをとるときとても大事なのである。教習時数が少ないとAT限定の教習を始めたのだが、思いの外難しく、(運動神経が鈍ってきたことも大きな理由だが)教習時数は大幅に増加してしまったのである。
 ともかく、じっくりと教習をしてもらいAT限定の免許を取ることができた。しかし、MTとの違いが分かってしまうと免許証に記載されている「普通二輪はAT車に限る」という文言が気になる。そこで限定解除の教習を受けることにする。教習所内では3速までしかあげることが難しいが、ギアを選びクラッチ操作によって速度調整をするのは気持ちがいい。乗車姿勢もATと比べると安定している。最終的に所定の教習時間+αで卒業し、免許証の裏面に「限定解除」の記載をしてもらうことができた。
 まだまだ二輪の経験は少ないが、四輪とは違ったスピード感、走行感を楽しみたいと思う。ただし、当初の「生身のまま外に晒されている」という実感を忘れず慎重な運転をしていきたい。