XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

電鍵についての実用新案

shig552009-05-17

前回の更新から早、一ヶ月以上が経ってしまった。桜の季節からすっかり緑の季節になっている。淡く軽やかな緑から黒々とした、たくましい緑までさまざまな緑がきれいな季節である。
今月の初めころ、国営ひたち海浜公園に行った。ネモフィラという空色の花が丘一面を覆っているのを見るためである。残念ながら曇り空だったが、それでも花の明るさですばらしい景色を見ることができた。

さて、今回の出来事は私のオークションの出品に送られてきたこんなメッセージから始まった。「機構が自分の出している商品と類似している。マナー違反ではないか」

ホームセンターなどで手に入る部品を組み合わせ作ったモールス符号送出用のミニパドルが結構いい出来だったので、同じ趣味の方に紹介するつもりで部品セットを出品していたのだ。それについての指摘である。「機構が似ている」との指摘で何か特許などに抵触しているのか、状況はわからないがこのような指摘をされたのではオークションを続けるわけにはいかないので、とりあえず出品の取り消しをして指摘をされた方と連絡を取ることにした。

その方は「どこでもパドル MINI」という製品を販売されている方だった。実用新案をとっているのでそれに抵触するのではとのことである。実用新案という制度についてよくわからなかったので、その方とのやりとりと平行して勉強をしていった。

「実用新案の対象となるアイデア(考案)は物の形状・構造・組み合わせであること」が要件であり、提出書類が揃っていれば登録され、10年間にわたりその権利か認められるとのこと。ただしその権利を執行するためには実用新案では、実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ、実用新案権を行使することができないとのことだった。また、書類の作成に結構費用がかかり、出願時の費用の他、登録料を毎年納めなくてはならないということがわかった。

また、特許庁に「特許電子図書館IPDL}というサイトがあり、特許や実用新案の内容について調べることができることもわかった。
「どこでもパドル」に付いているという実用新案について登録番号をもとに調べてみた。登録されていたのは「固定装置交換型横振れ電鍵」というものだった。たくさんの文書と図面で構成されていたがその中で、「【実用新案登録請求の範囲】という項目があり、
【請求項1】
横振れ電鍵の構造を操作部分(パドルと電気接点及び調整機構を含む)と固定装置に分け、固定装置を取り外し可能とした横振れ電鍵。
【請求項2】
横振れ電鍵の構造を操作部分(パドルと電気接点及び調整機構を含む)と固定装置に分け、両者を軸でつなぐ構造とした横振れ電鍵。
という部分が今回の「機構が類似しているのでマナー違反」との内容であることがわかってきた。

「どこでもパドル」を販売されている方との何回かのやりとりでわかったのは、ビス留めで構成されている私のミニパドルは「取り外し可能な機構である」とのこと、スペーサーを使った部分が「軸でつなぐ構造である」との指摘だった。

私のミニパドルは市販されている部品を組み合わせて作っている。アマチュアが自作する楽しみのものである。溶接をして作るようなことは想定外である。ビス留めであることで、「取り外し可能」と見なされたのだ。
小型に作るためマイクロスイッチの保持部と台になるマグネットをスペーサ1本で繋いだ。このスペーサー1本であることが「軸でつなぐ構造=回転可能」と見なすという。

実用新案とはこのようなものなのかと学ぶことができた。高額の経費を使ってこの権利を登録されていることに敬意を表するしかない。オークションという場を使って同好の士に私なりの工夫を知らせようと思っての出品であったが、商売としてやっていらっしゃる方にとっては権利侵害になってしまうのだと理解した。オークションでの出品は打ち切ることとする。
一つの指摘をきっかけに多くのことを学ばせていただいた一件であった。


<追伸>

同氏はもう一つの実用新案を持っていらっしゃるようで、それによると
電気接点交換型縦振り電鍵【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
電鍵の電気接点にソケットで支持され、交換可能なマイクロスイッチを用いた縦振り電鍵。
【請求項2】
電鍵のつまみ押し圧を生じさせる要素に、磁石の反発力を用いた縦振り電鍵。
【請求項3】
電鍵のレバーの支持方法を片持ち梁構造とし、レバー後端を基台に設けたレバー支持体に、可撓性支持体を介して接合した縦振り電鍵。

以上3点が請求の範囲として登録されている。これによるとマイクロスイッチを交換可能な接点とした電鍵、磁石の反発力を利用した電鍵、竿部分をたわむような材質のものでつないだ電鍵はこの実用新案に抵触する可能性があることになる。もの作りの楽しみも扱いに注意が必要なようである。