XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

無何有の郷

shig552007-07-15

台風4号が列島の太平洋側に沿って北上(東進?)している。沖縄、九州地方には大量の降雨があったようだ。暴風圏も広い大型の台風とのことで、関東地方は今日午後からその暴風圏に入る見込みとのこと。三連休であったがこの影響で外出を取りやめた人が多いようだ。幹線道路も車の数が少ない。空の便は関西からの便が軒並み欠航している。
自然現象の前には人間の営みも為す術がない。警戒し、被害を少なくするよう対処するのみである。「旅行を取りやめ、久しぶりで家族揃って家にいる」というコメントがラジオから流れていた。普段、それぞれの仕事や学業に追われ、別々の行動をしている家族でも、家に閉じこめられることでゆったりした時間を楽しめる日曜日になった。

「無何有の郷」(むかうのさとORむかゆうのさと)と言う言葉を見つけた。荘子の逍遙遊からの語で理想郷を示す言葉だという。作為がなくありのままの自然、己が自然のままでいられる楽土。何処にもないようでいて本当は何処にでもある。

     逍遙遊
   何ぞ之を無何有の郷
   広莫の野に樹(う)え
   彷徨乎(こ)として其の側(かたわら)に無為にし
   逍遙乎として其の下に寝臥せざる

メーテルリンクの青い鳥を思わせるような幸福論であるが、日々、「有」を求め動き回っている身から思うと、このような心境に惹かれるところがある。ものに囲まれ、しがらみに絡まれ、自分が自分でなくなり「ねばならない」という状況の中で過ごすことが多い毎日である。「自分らしく」という生き方への憧憬があるようだ。

一方、「無為の退屈」という面もある。さまざまな関わりがあるからこそ自分を保っていられるのであり、全くの無為の状況に置かれたら発狂してしまうだろう。

自分らしくとは言っても、その自分が生い立ちの中で形作られてきたものなのだから、社会と切り離すことはできない。個とは言ってもひヒトという種の中での共通意識の存在である。無何有の郷へのあこがれは、付かず離れずゆったりした関わりの中で過ごしたいという欲求なのだ。

台風の接近という自然の前に、人はひたすら大きな被害をもたらさずに通り過ぎてくれることを願うしかない。あるがままを受け入れることも大事なことのようである。