XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

液状化現象

shig552007-07-21

子どもたちは夏休みに入ったようだ。例年なら梅雨も明け、暑い夏の陽射しの中で子どもたちの歓声が聞こえてくる季節である。しかし、今年は台風4号の通過と中越沖地震の被害、気温も20℃台の涼しさとどんよりとした雲に覆われた天候である。すっきり「夏休みだ」という気分にはなれないのでは、と感じられる夏休み入りである。

地震による被害で「液状化現象」による建物の倒壊や道路、鉄道の被害、路面でのマンホールの浮き上がりなど、さまざまなことが起きている。通常しっかりと固まっていると思われる地面が、地震による揺れて、あたかも液体のように様相を変えてしまうのだという。個体と液体という様相の変化が揺れだけで起きてしまい、それも建物や道路など構造物までも動かしてしまうと言うことに信じがたい思いを持っていた。

産業技術総合研究所の地質標本館で地質情報研究部門と防災科学研究部門が興味深い展示をしていた。地盤液状化実験ボトル「エキジョッカー」と「エッキー」である。なにか仮面ライダー世代を連想させるような命名であるが、内容は大変わかりやすい実験装置であった。
ペットボトルの中によく洗浄された砂と、その砂よりも少し比重を軽くするように調整された掲示用のピン(地中に埋設された構造物に相当する)、それに水が満たされている。ペットボトルをよく振り、中の砂や水を攪拌し、しばらく放置すると砂とピンは沈殿し、ピンは砂に埋まったような状態になる。
この状態で外部から衝撃を与えると砂の安定状態が崩れ、液状化が観察される。
私は地震による液状化という認識があったので「揺れる」という現象を考えていたのだが、実際には「衝撃」だけで液状化が起こってしまった。指先でペットボトルをちょんとたたくだけである。砂と水との均衡状態がほんのわずかな衝撃を受けるだけで崩れ、砂は重力でしたに沈み、排出された水が上昇してくる。同時に砂より比重の軽いピンは浮かび上がり砂の表面に出てくる。
地下の水位が低い場合にはこのような現象は起こらないとのことだが、水位が高く、地盤と水が微妙なバランスの元に成り立っているような状況では、地震という「衝撃」によって地盤という固体状態が一瞬に液体状態になってしまうことがシミュレーションされる実験装置である。

今回の中越沖地震でも、またその前の能登半島地震でもこの液状化現象は起こっている。地下水は私たちの生活に有益ではあるが、それが大きな災害に結びつくということも事実のようである。地形、地質という大きな視点で私たちの生活する空間を認識することが必要であり、私たちが自然現象の中にいるのだということを忘れてはいけないと思った。