XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

はやぶさプロジェクト

shig552007-06-23

「梅雨入り宣言が早すぎた」というような天気続きのこのごろ。今日も朝から青空がまぶしい。空気がしっとりとして、これで気温が上がらなければ気持ちのよい日になるのだが、だんだんに暑くなってきた。しっとりがじめじめに変わってくる。
花菖蒲が見頃だ。先日ちょっと足を伸ばして見物に行ってきた。鮮やかな紫系統の色が溢れていた。緑の葉との対照がまぶしいくらいで、当日は晴天だったのだが、この花菖蒲を観るには梅雨空の方がふさわしいと感じた。強う陽射しの中では花の色が強すぎるのだ。どんよりとした雲を通しての優しい光のなかで観る花菖蒲がふさわしい。

はやぶさ」(幻冬舎新書)という本を読んでいる。
2005年11月に探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワ」に着陸したときにはJAXAのサイトの小さな画面でその感動を味わった。ほとんど動きのない粗い画面ではあったが、2億Kmもの深宇宙で行われていることに思いをはせていた。
地球近接軌道を持つ小惑星イトカワ」は日本のロケット研究の父である糸川英夫博士にちなんで名付けられた長径で500mほどの惑星だが、その姿を近くで見たものは誰もいなかった。今回のプロジェクトで初めてその姿を目にすることができた。ジャガイモのような、ラッコのような2つの物体がつながりあったようなごつごつした姿は、これまでの惑星に対するイメージをまったく変えるものであった。
イトカワ」への着陸、サンプル採取、そして帰還というミッションを行うことになっていたが通信に40分ものタイムラグが生ずる超遠距離で行われていることなので、想像を働かせて観ているより他なかった。
このプロジェクトに関わった吉田武さんが書かれたこの本は、このプロジェクトの全容をドキュメントタッチで見せてくれる。
2003年5月、内之浦を飛び立った探査機はイオンエンジンという新しい推進方法で「イトカワ」に近づき、2005年9月「イトカワ」の上空20kmのゲートポジションに到着。さまざまな観測をおこない、11月いよいよ降下。探査ローバ「ミネルバ」を放出するもコントロールを失って「イトカワ」に送り込むことに失敗してしまう。「はやぶさ」本体が着陸する体制に入り、88万人の名前の入ったターゲットマーカーを放出し、それを目当てに自律的に着陸したという。後から送られてきたデータ記録から着陸は2回行われたようで、想定外の動きによってサンプル採取については正常に作動しなかった恐れもあるようだ。
その後「イトカワ」からの離脱は行われたものの、その際に電源電圧の低下や燃料の漏洩などいくつものトラブルが発生し、すぐには地球帰還軌道に移ることができなかった。さまざまな検討と地上での予備実験によって代替策が練られ、2007年4月やっと地球への帰還軌道に移り2010年6月の地球帰還が待たれている。

プロジェクト発足からさまざまな機構改革の中で研究体勢の枠組みが変わってきたが「宇宙研」という大きなくくりとしてこのプロジェクトが進められてきた。世界の先陣を切って独自の技術で行われてきたこのプロジェクトも、すでに諸外国の追随を受けている。「はやぶさー2」の構想も進められているようだ。既存技術の追試ではない、まったく新たなものを作り出すプロジェクトとしてさらに発展して欲しいものだ。

今も、地球を目指して「はやぶさ」が満身創痍の状態ながらも地球を目指して飛行している。科学的探求と技術の追求、チャレンジのすばらしさが伝わってくる。子どもたちへの夢が進行している。