XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

薪能

shig552006-05-19

不安定な天候。一時晴れ間も見えたがひどい雨が降ってきた。

とある神社で薪能があった。野外であるので、宮司さんが能の始まる前、「神様のご加護で能の終わるまで雨が降りませんように」とお祈りをしていた。
かがり火を炊き、薪のはぜる音の中で能が上演された。小鼓、大鼓、笛、そして唄い方の音色が境内に響く。豪華な衣装のシテが静かに舞台の上を舞っている。笛の音が強く、切り裂くようにときに優しく物語をすすめていく。小鼓や大鼓の音が澄んだ音を刻んでいく。オーケストラのような華やかさや装飾性はないがきりりとした雰囲気を醸し出している。
舞台の大きな松の絵の装飾、かがり火の光、シテの豪華な衣装と、ワキの質素だが品のある衣装、そこに笛や鼓など音楽が加わり、地面からわき上がるような地方の謡が加わる。すべてが混然として一つの幽玄な世界を作っている。
能楽堂の舞台はそれなりに落ち着いていて、能の世界に真っ直ぐに誘ってくれるが、薪能の舞台は木々のそよぎが聞こえ、気持ちのよい風が流れ、かがり火の煙が漂ってくる野趣のある、ひと味違った世界である。
もともと能はこのような淡い光の中で、自然の風を感じながらカジュアルに楽しんでいたのではないだろうか。

演目が終わり、席を立った途端、大粒の雨が降り出した。まるで演目が終わるのを待っていたかのようであった。禰宜さんのお祈りがそのままに叶えられた今日の天気であった。