XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ハンギングMLA

ハンギングMLA 給電部

 春一番が吹き、続けざまに強風が吹きまくっていた。それでも日一日と日差しが強くなり、春が近づいてきたようだ。
 暖かくなると、屋外での運用がしたくなる。自然の息吹を感じながら、電波がどこまで飛んでくれるか、どんな局が応えてくれるか、思いを馳せながらのんびりするのは楽しい。
 野外運用で面倒なことはアンテナの設営である。その場の状況を見ながら、周囲の人に迷惑の掛からないよう伸展する。私が主に使っているEFHWという半波長のアンテナでも7MHz帯では20mになってしまう。もっと手軽なアンテナがないかと探していた時、おもしろいアンテナと出会った。
 MLA(Magnetic  Loop Antenna)というとても小さな輪のような形のものである。直径1m程度の大きさで7MHz帯で運用することができるという。市販もされているようでどれもコンパクトで野外運用でも手間なしに使えそうな大きさである。
 どのようなアンテナなのか調べてみると、構造はいたって簡単で、ループと組み合わせたキャパシタでその周波数に同調させ、この回路にカップリングさせたラインをトランシーバーに繋いでいる。カップリングにはさまざまなやり方があるようだ。とりあえず、手持ちの部品を使って実験してみる。市販品はループ部にしっかりしたパイプを使い、頑丈な輪を作っているが、見渡しても、私の周りにはそのようなものは見当たらない。そこで、手持ちの太めの銅線を輪にしてバリコンを付け、カップリング部も同じ銅線で小さな輪を作り給電できるようにした。手持ちの関係から、大きな輪は2m、小さい輪は40cmの長さの銅線である。組み立てて測ってみると10MHzと14MHzで同調がとれ、SWRをほぼ1に近くすることができた。こんな簡単な工作でこのデータが得られるとは驚きである。
 しかし、7MHzに同調させることはできなかった。そこで同軸ケーブルの編組を使うことにする。3mの同軸ケーブルで大きな輪を作り、給電部はトロイドコアを介する構造を試してみた。この大きさにすることで、7MHzでも同調が取れるようになった。調整をしているうちにCQを出している局が聞こえてきたので呼びかけてみる。リグは出力3Wである。何回かでコールバックがあり、交信が成立した。部屋の中で仮設状態でもアンテナとして機能している。
 このアンテナはどこまでシンプルにできるだろうとチャレンジである。普通のワイヤーでもできるのではないか、キャパシタQRPで使うのなら小型のトリマーは使えないか。プラスチックのハンガーにワイヤーを這わせ、横にツッパリの棒を入れて輪の形にする。キャパシタは重ねた金属板をビスで締め付けることで容量を変化させるタイプのトリマーを取り付け、ワイヤーの輪を繋ぐ。給電部はトロイドコアにワイヤーを通し、コアにエナメル線を巻いて同軸線へと繋げている。アナライザーで測定すると、しっかり同調点が見つかり、インピーダンスも50Ωに近く、所定の周波数でSWRを下げることができた。
 ただし、このアンテナは調整がクリティカルである。キャパシタの微妙な変化でデータが変化する。形状の変化も大きく影響する。また、キャパシタ部には高電圧が発生することもわかってきた。これが、市販品が太いパイプを使い、しっかりしたカバーを付けいている理由のようだ。モータードライブでキャパシタの調整をする機構が使われているのもこの高電圧対策なのだろう。
 取扱いに配慮しなければならないところもあるが、このMLAは移動運用に使えそうな気がしている。ハンギングMLAで山の上からCQを出してみたい。