JARL(JapanAmateurRadioLeague: 日本アマチュア無線連盟)からQSLカードが届いた。アマチュア無線(Ham)では交信をした証として交信証(QSLカード)を交換することが行われている。人によっては交信数が月に数百に及ぶので、この交換を郵送などを利用すると大変な費用がかかってしまう。そこで各国の無線連盟が連携して連盟間でカードを交換する仕組みができている。もちろん国内においてもHam同士がカードを交換する時、連盟にカードを送ることでカードの交換ができる。
届いたカードの中にARRLの100周年記念局がグァム島で運用したとき、私が交信できた時のカードがあった。家の周りに張ったワイヤーアンテナと3w程の小電力での電波がグァムまで飛んで行ったのだ。
ARRLはAmericaRadioRelayLeagueというアマチュア無線では大変に歴史のある団体である。USAでのアマチュア無線は広い国土の中で通信手段を確保するため、互いに通信を中継(Relay)して行っていたということから生まれた団体だという。日本のJARLが無線通信の技術的興味から始まったアマチュア無線の団体ということとは多少異なった成り立ちである。
そのARRLが100周年を迎えると言うことで記念局が各地で運用され、たまたま交信できたのだが、カードの日付を見ると2014/03/20となっていた。もう2年も前である。
JARLは今年創立90周年を迎えた。戦前に結成され、中断はあったもののアマチュア無線の火を灯し続けてきた団体である。8J※90Yという記念局が運用されている。
無線には国境がない。電離層などの状態によって伝播が左右されるが、どこまでも伝わっていく。そのために世界情勢に依ってはさまざまな規制を受けてきた。戦時にはアマチュア無線の運用は禁止され、受信することすら制限されたという。終戦になり、アマチュア無線が再開され、電子技術の急速な発展をも、アマチュアが自由な発想から推進してきた経緯がある。再現性も経費も効率をも顧みず、技術的な興味だけで進むことができるアマチュアだからこそ見いだすことができた技術もある。無線技術の裾野を広げていたのがアマチュア無線だったといえるだろう。
しかし、どこにでも飛んでいったしまう電波だからこそ、平和な時代でなければ運用できないのもアマチュア無線である。国境を越えて見知らぬ個人と個人が直接交信できることのすばらしさがある。国内であっても見知らぬ土地の人と話ができる楽しさである。そして、より広く交信するために無線機を改良し、アンテナを工夫し、通信技術を鍛錬していくおもしろさがある。
交信証を紙のカードで交換していたのだが最近ではインターネットを通じて電子情報として交信証を交換することも行われている。不確実なアマチュア無線を高度に発達した通信技術が支えているということも妙なことだが、電信などシンプルな人間的な交信はこれからも生き残っていってほしい思う。人間の五感を活用した通信はものづくりと同様、人の生き様と関わることだと思うからである。