XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

雨のち曇り、でも一瞬見えた。

shig552009-07-22

 38年前、どこかに出かけた帰りだったと思う。周りの様子が何か変に感じた。少し明るさが弱くなったようにも思った。そして道に映る木の陰の中にそれを見つけたのだ。三日月である。木漏れ日の中にたくさんの三日月が揺れていた。前回の日食を見たときの思い出である。東京での経験であるので部分日食だったのだと思う。真っ暗になったことは記憶にない。その三日月型の木漏れ日が強い印象で記憶に残っている。
 今日、46年ぶりという皆既日食が日本の近くで起こった。インドから始まり、ブータン、中国を経て日本の南を通り、小笠原諸島の南に抜ける皆既帯でであった。インドでは日の出から日食が始まり、上海ではその時間帯に雷雨になり、厚い雲の下で短時間の闇が訪れたという。悪石島では雨が降り直接太陽を見ることはできなかったようだ。太平洋上に船を出した人々は晴天域に入り、見事なダイヤモンドリングやプロミネンス、コロナが見られたそうだ。
 東京では9:55から食が始まり、食の最大が11:13で0.75まで太陽が欠け、12:30に食が終わると言うことであった。ところが朝から雨が降り続き、厚い雲が広がっている。日食が始まる時間になっても雲が切れる様子が見られない。こんなに雲が多くては日食を見ることは無理だと、諦めてテレビでの中継を見ている状態であった。
 ところが、そんな雲の多い空を見上げている人がいる。そして「見えた、見えた」という声が聞こえてきた。あわてて外に出て一緒に空を見上げるが、雲だらけの空である。しばらく空を見上げていたとき、雲の間から太陽が顔をのぞかせたのである。雲が切れたのではない。雲が重なり合ったその一部が薄くなり、ちょうどフィルタを掛けたように、肉眼でも直視できる明るさの太陽が覗けたのだ。三日月型をした部分食の日食である。ほんの一瞬であったが日食を見ることができた。雲の流れでその後も、もう一度三日月型の太陽を見ることができた。幸運である。
 雨が降り、雲が多いので見られないと思い込み、諦めていたので、この幸運は大きな喜びになった。思い込みでなく、チャレンジすることの大切さを思い知らされた。
 皆既日食は見かけ上の太陽と月が重なることで起こる現象である。太陽は月の400倍も大きいが、月よりも400倍も遠くにあるので、見かけ上、同じ大きさになりちょうど重なって黒い太陽が生まれるのだそうだ。さらに、その本影が地球に達し、そこにいる人にだけ見ることのできる現象である。多くの要因が重なることで起こるとても貴重な体験である。
 次回は26年後の2036年9月2日北陸から関東にかけて皆既日食が見られるそうだ。その前に2012年5月21日には九州から関東の太平洋沿岸地方で金環日食が見られるという。大きな天体ショウに期待が膨らむ。