XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

陶の小径

shig552008-11-28

だいぶ秋が深まり、平地でも紅葉が進んでいる。晩秋と言うよりも初冬という方がいいような気温の日が続いた。北の方からは吹雪の映像が送られてくる。家から見える富士山も中腹まで白くなっている。

この秋は、笠間の「陶火祭・匠のまつり」に行くことが出来なかった。このところ毎回、秋空の下で芸術の森公園に集まるたくさんの陶器と稲田石などの作品を楽しんできたのだが、今年は都合をつけられなかったのだ。
笠間のやきものは日常使いのものなので、日頃使っていると欠けたり、壊れてしまうものも出てくる。そろそろ補充をしなくてはならないこともあり、祭りではない日に、訪れることになった。
益子は共販センターを中心に陶器の店が道の両側にずらりと並んでいるが、笠間はそのようなところはないようだ。芸術の森公園の近くに「作家と会える、陶の小径」という案内板を見つけ、歩いてみることにする。一つ一つの家で工房と販売店を構えているような造りで、小規模な生産が行われている。それぞれの店の得意があるようで、見て歩くだけでもなかなかおもしろい。得意とする技法が違うのだろう、焼き締めに特徴があったり、造形のおもしろさが中心であったり、金彩を多用している作品があり、食器ではなく陶板画や時計などインテリア中心の店もある。休日に訪ねたのだが、どの店にも人影はなく、店にはいると人が出てくるような閑散とした状態である。だからこそ、店の中をゆっくり見て回り、それをつくっている方と言葉を交わすことが出来て楽しいひとときを持てる。

今回、大きな収穫があった。何年も前、陶火祭で手に入れた器があり、それが気に入ってその後もシリーズものとして器をそろえてきた。焼き締めをした黒ずんだ下地に上薬を掛け、刷毛目を入れたような文様だが、どれ一つとして同じ文様がなく、色合いも上薬の広がり具合も違っている。それでいて同じような雰囲気を持つ器である。その雰囲気で買いそろえてきたので、店の名前は意識しなかったのだが、今回、偶然にもそれを作っている店を見つけたのである。
芸術の森公園の駐車場に車を置き、陶の小径を進んで右に折れたところにその店はあった。ガラス戸を開け、店にはいると奥から作業着姿の方が出てきて挨拶をしてくれた。特に声をかけられるでもなく、気ままに店内を見て歩ける。そこではたと気づいたのである。これまでそろえてきた器はこの店のものだったのだ。気づくのが遅いのだが、この店には同じものは二つとなく全部が一点ものなのだ。その一つ一つを見ることに気を取られていて、全体の雰囲気に気づくのが遅れてしまった。家にあるのと同じ形の器を見つけたとき、同じ人の作ったものと気づいたのだ。
お店によっては同じものがいくつも並んでいて、「量産品」という感じが否めないが、手作りだからこそ出来る一つ一つ異なるものもいいものである。日常の食器として使う場合、形や大きさは同じ方がよいと思うが、色や模様まで同じである必要もない。ある程度の統一感はあった方がいいが、一つ一つの個性を楽しむのもいいものだ。この店にはそのようなものが並んでいる。作り手が一つ一つを楽しみながら(苦しみながら)作っているのがわかる。
そのようなわけで、嬉しい出会いから、またまたお皿を購入した。これもいい、あれもいいと選んでいるうちに家族の人数分よりも多く買うことになり、重い荷物を提げながらの散策になったのである。