XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

技術の進歩

ブレッドボードでの動作確認

 今日は夏至。東北地方が梅雨入りし、新たな土砂災害への警戒を強めている。不安定な気象状況で局地的な強い雨も心配されている。夏至という言葉とはそぐわないような暦の移ろいである。

 先日、手紙をいただいた。20年以上も前に製作し紹介した記事に対する質問である。その方はリタイアしたので時間ができたのを機会に、もの作りを始められたそうである。もの作りのおもしろさとともに一つ一つ課題を解決していくことを楽しんでいらっしゃるようだ。新しい世界へ踏み出すのは不安もあるが、ワクワクするような期待感も大きい。もの作りという分野はパズルを解いていくようなところもあり、壁にぶつかりながらそれを一つずつ乗り越えていく達成感がおもしろい。慣れてくれば、どの方面に解決の糸口がありそうかが何となくわかってくるのだが、初めのうちは五里霧中である。

 改めて当時の記事を読み返してみた。今とはだいぶ状況が違っていた。製作の意図から雲泥の差である。現在の機器はほとんどがマイコン内蔵でソフト的に機能が構成されている。当時のリグ(無線機)にはマイコンなど存在せず、一つ一つの部品を組み合わせて構成されている。モールス符号を送信するとき、現在ではパドルを接続すれば短点・長点・間隔のそろった綺麗な符号が生成することができる。また自動で送信・受信が切り替わるのが当たり前になっている。20年以上前のリグでは電鍵と呼ばれる「米つきバッタ」を使って職人的な技量でモールス符号を送っていた。送信・受信の切り替えも手動であった。

 製作記事は、送受信切り替えを自動で行う付加装置を作ったものであった。当時のリグを使うのには便利かもしれない。しかし、この間の技術の進歩は大きい。特にワンチップマイコンというデバイスが手軽に使える状況になり、さまざまな機能がプログラムによって行えるようになったのは大きな変化である。当時、コンデンサーの放電特性を使って遅延時間を設定していたのが、プログラムに数値を入力するだけで正確な時間設定ができるようになっている。
 同じような機能の装置を今使える技術で作ったらどうなるだろうという興味がわき上がってきた。ただし、電鍵ではなくパドルで符号を生成できるようにしたい。あれこれ仕様を考え、週末のお楽しみとなった。作業のほとんどはパソコンの画面を見ながらのプログラムである。デバッグを繰り返しながらプログラムを改良し、流れるようになったらワンチップマイコンに書き込み動作確認をする。ブレッドボードという便利なものがありデバイスを差し込み、ワイヤーを差し込むだけで試験回路ができてしまう。思い通りの動作になるよう定数を変更していくことでプログラムができあがる。
 マイコンを使った製作で便利なのは使うデバイスが少なく、回路が簡単であることだ。ユニバーサル基板を使えば短時間で組み立てられる。しかし、今回の製作は装置を作ることよりも技術的な興味であるので、ケースに組み込むまでの製作には進まず、機能を確認したところで終わりとした。
 記事の執筆当時、汗びっしょりかきながらはんだごてで何度も回路を変更していたころを思いだし、技術の進歩を実感した週末であった。、