
道路の脇などに並んでいる柱を電柱とか電信柱と呼んでいる。しかしその柱のほとんどが電力線や電話などの通信線、データーを送るグラスファイバーなどが設置されたものである。商業電力が広まる前に、電信の信号を伝える線を張るために設置されたことからこの名前が残されているようだ。違和感なく「でんしんばしら」と呼んではいるが、電信という言葉自体は既に死語に近いものになってしまった。
電信にはさまざまな種類があるのだが、耳で信号を聞き、手で送ることができるモールス符号を使った電信は今ではごく一部を除き公衆通信では使われることはなくなってしまった。それでもアマチュア無線においては細々と伝承されている。
モールス電信を使えるようになるにはそれなりの修練が必要である。習得することは難しいが、自分の技能が徐々に上達していく喜びも感じることができる。また、単純な短点と長点の組み合わせの符号という特性は雑音の多い伝播状態の中でも微かに聞こえる信号から解読することが可能であり、困難な状況の中でも通信ができたという喜びは大きい。
モールス符号による電信は使う人がいてこそ意味があると思う。本に書かれた記録としてのモールス符号では電信の奥深さを伝えていくことは難しい。
電信のおもしろさに惹かれて集ったA1CLUB(エーワン クラブ)ではモールス符号による通信の魅力を広く伝え、後世に引き継いでいくための活動を行っている。
『そこで我々は愛すべきCWを後世に残していく活動を推進する者を
CW KeyPerと称して敬意を表し記憶(記録)に残していくことにしました』
というKeyPerプロジェクトである。ものとして電鍵などを引き継ぐことも行っているが、プロジェクトの第2弾として 『次世代支援プロジェクト』が始まった。
支援内容
A1CLUBメンバー有志より電鍵、パドル、その他CW関連機器を寄贈する
支援対象
日本全国の学校の無線クラブ局(既存または計画中)、
学校にクラブ局がない学生個人やCW経験者がいない一般クラブ局も応相談
携帯電話やインターネット等を使った通信が一般化した昨今、一文字一文字を手送りで送るという通信を知る若い方々は少ない。電気通信の原点とも言えるモールス電信を実際に使うという技能を継承していくことは喫緊の要事である。クラブのメンバーはかつてのラジオ少年だった方々が主流で若い人は少ない。モールス符号を習得する困難に何らかの支援ができるのではと思案しながらこのプロジェクトは進められている。新たなラジオ少年が生まれてくることを期待したい。