XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

プチ パイルアップ

タイミングよく呼びかけるために

 電波を使って、どこかの誰かと交信したいというのがアマチュア無線である。普段交信できないところ、電波の届きにくいところなどは貴重だ。誰も住んでいない島や無線をする人の数が少ない地方などから電波が出ると多くの局が交信したいと思う。DXペディションといわれる希少価値のある所からの運用では世界中からたくさんの呼びかけが行われる。そうした呼びかけが集中した状態をパイルアップという。もっとも、このような運用を行うのはベテランのオペレータであり、スプリットという送信と受信の周波数を離して行うことが多く、見事なキー捌きで数多くの局との交信を行っていく。
 小さなパイルアップは国内でも起こることがある。先日のクラブでのオンエアーミーティングは伝播コンディションもよく、キー局に対して数多くの局からの呼びかけが行われていた。このOAMでは同じ周波数で送信・受信が行われるのでキー局への呼びかけに、たくさんの局から一斉に電波が発せられる。まるで蜂の大群に襲われたようにその周波数はワーンという音の塊となり、符号を判別することが難しくなる。その中でキー局は局名を聞き取り交信を進める。凄い技能だと思うのだが、呼びかけをする方もキー局に信号を取ってもらうためにさまざまな工夫をする。強力な電波を送るために電力を上げ、アンテナの効率を向上させる。周波数を微妙に変移させ電波の塊から逃れる。キーイングスピードを変えて、キー局の気を引く。タイミングをずらせて音の塊を外すようにする。などなど、キー局にこちらの信号を認識してもらうために試行錯誤をするのだ。
 しかし、高性能な設備を揃えることは容易いことではない。レイトコールという呼びかけを極端に他局から遅らせてすると、キー局の送信と重なってしまい混信になってしまう。周波数を変移しすぎるとキー局に気づいてもらえないことがある。試行錯誤にも限りがある。ともあれキー局は受信できる順番に交信してくれているので、競争相手が少なくなるのを待つのが得策である。
 伝播状態は常に流動的であり、キー局が強く聞こえるからといってちらからの信号が強く届くというものでもない。伝播の不思議で偶然性が大きいのだ。そこでOAMの運用状況を注意深く聞くようにする。そして、タイミングよく呼びかけるために、リグ内蔵のキーヤーではなく外付けの簡単なキーヤーに自局のコールサインを記録しておきボタン一つで呼びかけができるようにしておく。キー局から局を指定してくることがある。JA1?とかQ?などエリアやコールの指定である。また、QRP ONLYのような指定もある。その時、空かさずボタンを押す。コールバックがあればしめたものだ。

 あまりに相手局が多い場合にはしばらく他の用事をして待つこともある。徐々にパイルアップが収まり、交信しやすくなるのを待つ。
 アマチュア無線はワッチに始まりワッチに終わると言われる。電波を出す前に状況を把握し、ここぞという時に電波を出すことを心掛けたい。