XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

達成感

こんな小さな設備でも・・・

 毎日無線の交信を楽しんでいる。さまざまな方とお空でお会いしているのだが、思い出深いのは結構苦労して交信できた時のことが多いようだ。厳しい状況の中でやっと繋がった喜び、達成感である。

 先日、奈良県宇陀市の移動局と繋がった。何回も呼び掛けてやっと繋がった交信である。アンテナを自作していて、直径70㎝ほどのループにしたアンテナの実験である。MLA(マグネットループアンテナ)という大変に小さなアンテナなのだが、より簡易にしたらどうだろうと取り組んできたものだった。輪にしたアルミ線にキャパシタを接続し使用する周波数に共振させる。そこにトロイドコアを介して給電する仕組みである。この時に使った周波数が7MHzで波長は40mになる。それを70cmのループから放出しようというのだから効率が良いわけがない。それでも、この形式のアンテナはそこそこ実用になると言われている。

 WSPR(Weak Signal Propagation Reporter)という仕組みがある。弱い信号で自分のコールサインや発信場所を示すグリッドロケータ、送信出力などを定められたプロトコルで送信すると世界中に配置された局が受信をしてそのデータをネット上の掲示板に返してくれるものだ。常時コンピュータによって動作しているのでアンテナの性能を確認することなどに使われている。私もこのシステムに実験中の小さなアンテナから電波を出しどの程度飛ぶか確認をさせてもらった。14MHzでの結果では2W程の出力で台湾やUSAのカルフォルニア、ユタなどから、国内では北海道からのレポートがあり、8000kmほどは飛んでいることがわかった7MHzではコンディションが開けていなかったようで、町田市や兵庫県三田市からのレポートであった。ともかく、こんな小さなアンテナからでも電波は出ているようである。

 さて、宇陀市の移動局への呼びかけだが、呼びかけをすれども他の強力な局の陰に隠れてしまうようで返信がもらえない。他の局が呼びかけていないタイミングを狙わなければならない。呼び掛けている局がいないと思ってコールするが、他の局へのコールバックがあったりする。当然、相手局の聞こえているのはこちらとは違うのだ。ひたすら呼びかけを繰り返す。するとサフィックスの一文字を繰り返して”?”が送られてきた。どうやら私の呼びかけが聞こえたようだ。こちらのコールサインを繰り返す。二文字わかってくれた。さらに自局のコールサインを送信する。QSBという信号が大きくなったり小さくなったりする現象があるのだろう。伝播が強くなる時に信号が届いてくれればと願う。そしてやっと私のコールサインが相手に伝わり、信号強度などのレポートを交換することができた。相手局に大変な手間を取らせてしまったが達成感のある交信であった。

 商業通信ではこのような非効率、不安定な通信は排除されてしまうが、アマチュアは技術的興味、自然条件への興味などからこうした交信も楽しませてもらえるのだと思う。不確実性への挑戦から達成感を味わうのもアマチュア無線の醍醐味と言えるだろう。