XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

アンテナ Trap

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熱収縮チューブで密閉する工夫をしました

 

 キャパシタとコイルを並列に組み合わせた回路がある周波数で共振した時、そのインピーダンスは最大となる。これを利用して電気的にアンテナエレメントの長さを区切る方法がトラップである。
  アンテナの長さは基本的にはその使おうとする周波数の波長に合わせると効率が良いようだ。そのため一つのエレメントを複数の周波数で使おうとすると、その長さを周波数ごとに変えなければならない。例えば、7MHzでは半波長の長さは20m、10MHzの場合は15mとなり、給電点から15mのところにスイッチを入れ、スイッチを切って10MHzを運用し、スイッチを入れて7MHzを運用するという具合だ。しかし、空中に設置したエレメントの途中にこのようなスイッチを取り付けることは実用的ではない。そこで、このトラップの登場となる。給電点から15mのところに10MHzに共振する回路を挿入する。エレメントに10MHzの電波が乗るとこのトラップはインピーダンスが最大となり、電気的にこの先のエレメントを切り離したと同じような状態になる。また、7MHzで運用するときには共振していないのでこのトラップはエレメントの一部のように動作し、その先のエレメントと一緒になって7MHzのアンテナとして動作するのだ。
 
 さて、製作である。有難いことに、トラップを製作するための計算機がネット上に公開されている。必要とする周波数を入力すると最適なインダクタンスとキャパシタンスを答えてくれる。これを使わせてもらいそのインダクタンスのコイルを巻けばよい。エレメントとしても動作させるので空芯のコイルが望ましいのだが、QRPでの使用ならばトロイドコアを使ってもどうにか動作しそうである。
 これも有り難いことにトロイドコアの種類ごとに、インダクタンスを入力すると何回巻けばよいか答えてくれるサイトがある。その巻き数のコイルを作る。キャパシタンスは計算通りの値のものは入手が難しい。そこで複数のキャパシタンスを組み合わせて求める値に近づけていく。
 出来上がったトラップは計算上のものであり、求める共振周波数に合っているか不明である。アナライザーなどを使って測定すると、ほとんどの場合期待値からずれている。そこで巻き数を増減したり、巻き方の粗密を変えたりして期待する周波数で共振するように調整する必要がある。
 トラップをエレメントの途中に入れるのだが、私はインシュロックなどで作った輪に両側のエレメントを結び、その輪の中にトラップを入れて、エレメントのテンションがトラップにかからないようにしている。
 これに熱収縮チューブを被せて保護する。全体を覆うように被せ熱風を当てるとトラップ部分を包んでくれるがエレメントが出ている両端は開いている。そこでこの中にホットグルーと呼ばれる熱することで接着に使用する樹脂を入れ、熱風を加えて融けているうちにペンチなどで口を綴じてしまう。こうすることでエレメントの途中に密閉したトラップを設置することが出来る。  製作記事
 
 給電部に近いエレメントの長さはほぼ計算通りだが、次の周波数のエレメントの長さはトラップがローディングコイルの働きになるため測定しながらの調整が必要である。

 1本のエレメントを設営するだけでアンテナの切り替えを気にすることなく複数のバンドに出られるのは便利である。ネットの助けを借りながら自分で設計したかのような雰囲気を味わえるのもいい。モノづくりと無線運用が共に行えるハムの楽しさである。