XRQ技研業務日誌

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NVIS動作

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地上高が低いのでNVIS動作?

 電波の伝播経路には直接波、電離層反射波、山岳などの回析波、ダクト反射波、流星痕反射波などさまざまな経路があるようだ。今通信している電波がどのようにつながっているかは想像するしかないが、さまざまな経路を辿っていることは間違いないであろう。実際、信号がエコーになって聞こえてくる場合があり、電離層と地上の間で反射を繰り返し、最短距離で届いた電波と地球を逆回りした電波とがわずかな時間差で聞こえることもあるという。
 さて、我が家のアンテナだが、地上高5m程の高さに設置している。これまで漠然とダイポールと同じような指向性で電離層反射で通信ができていると考えていた。しかし、NVISという伝播の仕方があることを知って、少し様子が違うのではないかと思えてきた。
 アンテナは地上高によって打ち上げ角が変わってくる。ダイポールなどのアンテナでは1/2λ以上の高さに伸展したとき、本来の指向性が出てきて、それより低い地上高の場合には打ち上げ角が高くなるようだ。すなわち地上高が低い場合、真上近くに向かって電波を打ち上げるようになる。この性質を使った伝播をNVISというのだそうだ。
 Near Vertical Incidence Skywaveという垂直に近い向きに電波を打ち上げ、電離層によって真下近くに反射させることで、近距離間の通信を行う方法である。もともとは短波を使った軍事関連の通信で近距離での不感地帯を解消するために使われたという。
 あえて地上高を低くし、打ち上げ角を大きくして行うNVISなのだが、私の場合、諸事情から高いアンテナが上げられず低いアンテナになっている。そのため、EFHWアンテナであっても横方向への伝播よりも上空への指向性が出てしまっているようだ。そう考えると、国内との通信が主であり、遠くの海外局との交信は稀なのも納得できる。
 打ち上げ角は波長に対しての地上高から決まってくるので、高い周波数では波長が短くなることから、アンテナの実際の地上高が低くても打ち上げ角はそれほど高くない。私の5m高のアンテナであっても21MHzや24MHzの場合には低い打ち上げ角になるようである。7MHzや3.5MHz、1.9MHzではNVIS動作と考える方が良いようだ。

 電離層反射ということで相手局との中間辺りの上空に電離層が現れれば通信ができると考えてきたが、アンテナの打ち上げ角という視点から考えると、どうも違うようだ。真上の電離層が変化することで、聞こえる局が時間とともに北海道から九州に移ったり、近畿が強くなったり、関東が全く聞こえなかったり、フェージングで信号強度が大きく変動したりするなど複雑な要素の中で起きていると考えられる。
 電波がどんな経路で2つの局の間を繋げてくれているのかは想像するしかないが、宇宙と地球という営みの中で、その時アマチュア局同士を偶然に結び付けてくれたことを想いながら交信を楽しみたい。貧弱なアンテナからもそれなりに電波は飛んでくれる。どんなルートで相手に届いているのかを想像するもはおもしろい。