1WatterとはKits and Parts dot comから販売されているトランシーバーのキットである。SmallWonderLabがなくなり、Hendricks QRP Kitsの経営者が替わり、ミズホ通信も営業を終止して寂しくなっていた。そこに現れた新しいキットである。この会社は以前に、Flying Pigというキットを出していたのだが、今回、装いも新たに1W出力というコンセプトでの登場である。
USAでの交信実績を見るとこのキットは20mバンドから始まったようで、1Wでも大いに楽しんでいるようだ。you-tubeで有名なK7QOが製作過程を10本の動画で紹介している。部品として、他の用途に使われるため安価で大量に市場に出ている水晶発振子を活用し、$50以下で販売されているのも嬉しい。VXOによりQRP呼び出し周波数付近での操作ができる。現在は第3世代になっていて10mから160mバンドのものがラインナップされている。
さて、新しもの好きの私は早速30mバンドのものを発注した。1週間ほどで届き、すぐに組み立て始める。しっかりした説明書があるので迷うことなく組みあがる。調整も苦労することなくでき、所定の1W出力を得て、受信も良好だった。VXOの周波数が10106kHzを含むように設定されているのでJAの通常使用する周波数は出られないが、10120kHz付近までは上がれるので良しとした。
気をよくして20mと80mを発注する。20mは順調に組み上げたが、調整段階で出力が出なかった。組み立て説明書の追加情報からバンドパスフィルターの巻き数などを変更しても解決しない。よくよくPCBを見ていると、イモハンダを発見。無事に出力が出るようになった。
80mも順調に組み上げたが、またも、受信はできても送信ができない。イモハンダがないか入念に調べ、ハンダ付けをやり直す。オシロスコープで各段の状況を見ると信号は出ている。バンドパスフィルターも機能している。終段トランジスタを取り外して確認するが壊れてはいない。何日も回路図をながめ、PCBを探るが問題箇所が見つからない。 そのうち、送信をしてもサイドトーンが出なくなった。どこかショートでもさせてしまったのかと調べるがわからない。落ち込んだ気分でいる時、気がついた。このキーヤーにはサイドトーンを出さなくするコマンドがあったのだ。コマンド「A」を入力すると「Y」と返ってきた。サイドトーンが出るようになる。PCBをいじっているうちにコマンド「A」を入れてしまったのだろう。
気を取り直して、送信出力のトラブルシュートを続ける。すでに動作している20mのPCBと比較してみる。信号の強さが違うことに気づいた。出力の出ている20mの方がプリアンプ段もドライバー段もずっと大きい。ということはミキサーに問題があるのではとNE602Aを交換してみる。出た、出力が出てきた。このICはキャリア発振とミキサーとして機能している。全く機能しないのではなく十分な出力が出ていなかったようである。 終段トランジスタは動作しているのだが出力が小さい。そこで手持ちの石に交換して十分な出力を得ることができた。
トラブルシュートはパズルを解く楽しみがある。情報が多いほど解決に近づきやすい。ものづくりの醍醐味を味わった一こまである。1Watter製作記事