XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

COEDO

蔵造りの町並み

 小江戸といわれる川越の散策を楽しんだ。今回は「あぐれっしゅ川越」という農産物販売所に併設された大きな駐車場に車を置かせてもらい、市内を散策した。途中でレトロなボンネットバスにも出会ったが、市内を循環しているようだ。
 川越は江戸城の北の守りとして松平信綱の時代に大改築が行われ、城下町として栄えたという。しかし、今では本丸御殿の一部や中の門堀の跡が残っているくらいで城跡は宅地化が進み、その昔の雰囲気はほとんど残っていない。市立博物館や美術館は二の丸や三の丸跡に建てられている。観光地として売り出されているのは「蔵造りの町並み」で、川越城から少し離れたところにある。
 もともと、川越は城下町であるとともに新河岸川の海運を利用した物流の中心地として栄えていた。ところが明治26年の大火で多くの商家が失われ、その時焼け残ったのが蔵造りの店だったそうだ。町の再建にあたって、十分な財力がこの地域にあったことから、火事に強いという店蔵を中心にし、加えて日本橋の蔵造りの商家を模して、その当時の最新技術を加味した蔵造り商家が作られたのだという。その家並みが昭和の戦火をも逃れて街道沿いに残っていて、「蔵造りの町並み」を中心にした整備をすすめてきたのが現在の状況のようである。

 町は観光地としてさまざまな工夫がなされている。小さな駐車場が町の中に数多く設置され、レンタルサイクルも置かれている。一休みできる公園やトイレも綺麗だった。店蔵は、時代を経た重厚さはそのままに、興味をそそる店舗になっている。箸や器などの木製品、包丁や職人道具などを扱う刃物の店、手ぬぐいなど地場産の木綿製品を扱う店や、お茶を使ったスィーツ、昔ながらの駄菓子の店。どちらかというを中高年が懐かしさを感じる品揃えである。和菓子のくらづくり本舗の店で食事をしたのだが、店舗の奥が座敷になっていて間口より奥行きが深い造りになっていた。華やかさはないが落ち着いたレトロな雰囲気を味わう食事だった。

 この地区は国の重要伝統的建造物群として指定されているが「美しい歴史的風土100選」としても選ばれ、”時の鐘”は「残したい日本の音風景100選」に、”菓子屋横町”は「かおり風景100選」に選ばれているそうだ。景観を活用し街おこしをすすめているが、人々の生活との調整が課題にもなっているようだ。「市による一番街一方通行化反対」というビラがそれを物語っていた。観光客にとってはせっかくの建築物群の中を走る自動車は邪魔なのだが、地域の交通としては大事なのだろう。テーマパークではない、生きている町の悩みなのだと思う。そこに住む人々の生活と調和した観光のあり方が追求されていくものと思われる。
 街歩きを楽しませてもらえることに感謝したい。