XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

トラブルシュート

TFDV光が丘

心肺蘇生訓練用タイミング送出器を作り、災害時支援ボランティアの皆さんに使ってもらっている。大きな会場で10人くらいずつのグループに別れて訓練をすることが多い。そのため、隣のグループの音が聞こえてくると邪魔になる。心肺蘇生のタイミングを音ではなく、光で示すのがVer1の機種であった。
しかし、動作をしながらタイミングを計るには光よりも音のほうが掴みやすい。そこで、グループの全員に聞こえる大きさの音でタイミングを示すVer2を作った。この機種では状況に応じて音を消す機能も持たせてある。

先日、小学校での心肺蘇生入門コース講習会のおり、仲間のボランティアから「音が出ない」という修理依頼を受けた。調べてみるとVer1の機種で正常に機能しているのだが、Ver2のように大きな音が出ないので故障と思われたようだ。

家に持ち帰り、Ver2への改修を行った。PICマイコンのプログラムの書換え、回路を追加し、ケースに戻したのだが、音が出ない。どこかがおかしいようである。トラブルシューティングの始まりだ。
まずは目視検査から始める。多くのトラブルは配線ミスや配線のし忘れが原因である。一つ一つの部品の接続を確かめていく。はんだ付けの怪しいところは再度加熱し、はんだが流れたことを確認する。そして電源を入れる。・・・・しかしまだ音が出ない。
次に考えたのはプログラムの壊れである。作業の途中で配線が接触し何らかの異常電流が流れてしまうこともある。そのようなときPICマイコンの入出力回路が破損してしまったりプログラムが壊れてしまったりすることがあるのだ。PICをプログラマーに接続し、元のプログラムと照合してみる。ところがプログラマーはPICを認識しない。これは困ったと思ったのだが、よく見るとプログラマーとの配線が外れていた。配線をし直すとPICは正常であることがわかる。
次に疑ったのはトランジスタ。ブレッドボードにトランジスタ周りの回路を組み立てPICからの信号を入れてみる。トランジスタを疑ったのはこれまで使っていた型番のトランジスタを使い切ってしまったので、今回は新たな型番のものを使っているからである。時として部品の微妙な仕様の違いによって動作しないこともある。この程度の回路ではまず大丈夫だと考えていたのだが、ともかく確認してみる。動作させるとブレッドボードからは音は出ている。トランジスタは大丈夫のようだ。
すると、怪しいのは音を出す圧電素子周りのようだ。ブレッドボードからの出力をケースの圧電素子に繋いでみる。音が出ない。配線を外し、接続を確認しているととんでもないことに気づいた。目視では接続されているように見えた部分だが線材のビニル被覆が癒着しているだけで導線が接続されていなかったのだ。
このような単純なことであったが、配線をやり直すことで正常な動作をするようになった。
トラブルシューティングは一つ一つ怪しいところを潰していくことが王道だが、思考実験で問題個所をずばりと見つけられたときは、パズルが解けたときのような喜びが感じられ楽しいものである。