XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

宵の明星

三日月の上側に宵の明星

 ♪春は名のみの、風の寒さや・・という早春賦のように、もうすぐ4月を迎えるこの時期になってもまだ風が冷たい。今年は東京地方では「春一番」は吹かなかったという。それでも日射しが強くなり、夕方の明るさも増してきた。

 昨日、日が暮れて何気なく空を見上げた時、すてきな天体ショウが見られた。西の空にお椀のような月が浮かび、その上の方にきらきらと輝く星が光っていた。そして月の下側には赤みを帯びた控えめな星が輝いていた。三つの天体がほぼ一直線上に並び、他の星たちを圧倒するほどの存在感を示していた。
 その美しさに歩みを止めしばし見とれてしまったのだが、月はともかく、二つの星が何なのか気になってきた。明るい星なら木星かもしれない、赤みを帯びた星は火星だろうかなどと考えながら家に帰り、天文年鑑を調べてみた。すると明るい星は宵の明星、金星で東方最離角に近づいてマイナス4.3等星の明るさになっているとのこと。また赤みを帯びた星は木星でマイナス2.1等星の明るさであることがわかった。普段の星空では木星も明るく感じるのだが、金星がこれほどに明るくなると色あせてしまうようだ。月は月齢3.9でほどよい明るさだった。月と二つの星とがちょうど調和のとれた明るさになり、位置も等間隔に並ぶような偶然が重なってこの天体ショウが催されたのだ。
 金星は27日の夕方には東方最大離角になり明るさもマイナス4.4等星になるようだ。この惑星は地球より太陽に近い軌道を回っているため、位置が地球に近づくときにはちょうど月が新月になるように太陽を背にして地球からは見ると金星の輝く面が少なくなってしまう。そのため明るく見えるのは半月のように見える最大離角の付近となる。今がその明るく見えるタイミングになるのだ。
 最大離角になるという16:44に空を仰いだのだが、まだ空全体が明るく金星の姿を見ることができなかった。夕暮れ後、南の空には少しふくらんだ三日月の下側に金星が輝いていた。昨日の天体ショウで得た感動ほどではなかったが、すっきりと輝く金星の姿はきれいである。太陽が沈み夕焼けがおさまった頃に白く輝く姿に「宵の明星」という名を付けたのもわかる気がした。
 今年は5月21日に金環日食があるという。豪華な天体ショウを見られそうなので楽しみである。