XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

日常を取り戻すために

陶芸の丘で顔を出していた

ゴールデンウィーク前半も終わる。何もせず家にいても仕方がない。被災地に多くのボランティアが行っているようだが、私には体力的に難しい。かえって交通渋滞や厄介の元になっては申し訳ない。
 そこで、近くで震災の被害を受けた地に消費活動ということで行くことにした。
 震度6強という激しい揺れに見舞われ、多くの窯が被害を受け、作品も失われたという益子を目指した。この連休は毎年、陶器市でにぎわうところである。いつもお邪魔する知床窯のお店はどうなっているのだろう。
 早朝に家を出て東京〜埼玉〜栃木と高速道を走る。心なしか車の数が少ない。窓に支援物資輸送中と書かれた紙を貼っている車もある。一般道に降りると周りの家々の屋根にブルーシートが目立ってくる。尾根の部分や瓦同士がぶつかるところの被害が多いようだ。すでに1ヶ月経つが修理の手が入っていない。これだけの数の修理となれば手が回らないのも致し方ない。塀が崩れているところも多く見かけた。大谷石のような石材を積んだ塀は大きな揺れに耐えられなかったようだ。
 益子の街に着く。陶器市のテントの数は例年より少ないようだ。また人出も若干少なく静かである。目当ての知床窯の本田さんの店に行く。いつも通りの営業をしているので安心する。話を聞くと震災の時、奥さんは店にいたが大きな揺れで一部の商品が落ちてしまい破損したが、大部分は助かったという。しかし、工房では窯に入れる前の作品が大部分破損してしまい、作り直すのが大変だったそうだ。象嵌てん前テントのご主人にも挨拶に行くと、「これまでこんなにたくさん作品を壊して捨てることがなかったので、小気味よい感じもした」と強がりを言っていたが、その悔しさはいかばかりかと推察された。4窯分もの作品が被害に遭ってしまったそうだ。でも、数は少なめだがいつものように爽やかな作品を並べ、息子さんと共にテントに立っている本田さんの姿は、益子の他の作家の皆さんの姿と重なって力強さを感じさせていた。

 もう一カ所、気になっているところがあった。那珂湊である。ニュースでは津波を受けて岸壁が崩れ、店も営業できない状態だと伝えていた。その後、営業を始めたという便りも聞こえてきたので、栃木〜茨城と高速道を走ることにする。
 一般道にはいると道路の凸凹が気になった。マンホールが浮き上がっているところがあるのだ。港に行くといつもの駐車場入り口は閉鎖され、奥側の半分を使っている。岸壁が崩れ、敷石がめくれあがっている。トイレも使用不能だ。それでもお魚市場ではいくつかの店が営業を始めている。買い物客も以前ほどではないが来ている。皆、思いは一つのようだ。震災からの復興は日常の生活を取り戻すこと。市場のにぎわいを取り戻すことが必要なのだ。
 那珂川沿いにおいしいイワシ丸干しを作っている店がある。そこを訪ねて驚いた。塀に大きな穴が開いている。海からの大波を被ってしまったようだ。人影は見えず営業ができない状態である。付近の公園もコンクリートブロックが剥がされて散乱していた。津波の爪痕が生々しい。

 「津波原発の大きな被害から比べればこんなことは被害とはいえない」と益子の方が言っていたが、それぞれが毎日の生活を取り戻すためにがんばっていられる。自分のできることから復興への力となっていきたい。