春の暖かさに油断しているとまた冬型の気圧配置が戻ってきた。雪の上を通ってきた冷たい風で震え上がる日が続いている。一雨ごとの暖かさとは言うが春になるのにはまだ時間がかかりそうである。「♪春は名のみの 風の寒さよ」とはこの時期のことなのだろう。
3月3日は桃の節句。ひな人形を飾り子どもの健やかな成長を祝うのだが、ひな人形の段飾りをさらに華やかにしてくれる「つるし飾り」が最近いろいろなところで取り上げられている。
調べてみると(wikipedia)「福岡県柳川市のさげもん、静岡県東伊豆町稲取地区の雛のつるし飾り、山形県酒田市の傘福を称して日本三大手芸とすることがある。」とのこと。それぞれに特徴があるようだ。どれも、着物のはぎれを用いて子どもの将来に縁起のよいもの、子どもへの願いなどを一つ一つ母親たちが手作りしたものである。
人形の街、岩槻にもつるし飾りを扱っている店があった。小さな手芸ではあるが一針一針手縫いで作られた飾りは暖かみがあり、一つ一つの表情がおもしろい。ひもにつるされる飾りの数やひもの数など地域によって異なるようだが、縮緬で作られた色とりどりの吊しものは見事である。
岩槻のコミュニティーセンターで作り方を教えてくれるというので訪ねてみた。うさぎ・羽子板・もも・金魚・扇・豆雛などの中から作りたいものを選んで材料を受け取り、地域のボランティアの方の指導で一針一針作っていく。小一時間でできあがるが、おしゃべりをしながらの楽しい時間である。一つを作るのにこれだけの時間がかかるので一本のひもにつるすいくつもの飾り物を作るのは大変な作業である。
稲取の雛のつるし飾りは母親たちが我が子の成長を祝うため、よねべ仕事で作った歴史があると聞いた。ものの豊かでなかった頃、このような大変な労力をかけることで、お祝いをしたようだ。
飾りには一つ一つ意味があるという。
- 犬 安産の守り神
- うさぎ 赤い目のうさぎは呪力があり、神様の使いといわれる
- 金魚 女の子が美しく育つように
- 猿 病が去る。難が去る
- 桃の実 邪を除ける力 延命長寿
- 茄子 成す と書いて大願成就
- 扇 末広がりで縁起がよい
- 羽子板 厄をとばす
- 巾着 お金に不自由しない
- 唐辛子 昔は虫除けの薬
- 大根 毒消し
- 薬袋 病気がすぐ治る
- 草履 早くあんよができますように
などなど
華やかな段飾り雛もよいのだが、一針一針母親の願いを込めて作られたつるし飾りは気持ちの温かさを感じる行事である。