XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

アンソロジー

shig552006-04-21

街路に植えられたツツジが鮮やかになってきた。枝全体が花になってしまったように鮮やかな色に染まっている。いろいろな種類があるようだがこの季節、街の中が色で溢れている。

アンソロジー(anthology)=名詩選集、詞華集、文芸作品の優れたものを集めたもの
石田衣良選・日本ペンクラブ編の「男の涙、女の涙」を読み終わった。読み終わったと言うより一気に読んでしまった。短い作品が集められているので通勤の往復で読めてしまう。せつない小説アンソロジーと銘打っているように、ずっしり重いというより何か圧迫されたような、重苦しさとさわやかさが残る。

野坂昭如さんの「凧になったお母さん」という話。童話という体裁だが今の子どもたちにどこまで理解できるだろうか。でも、事実としてこのような状況があったことは知らせなくてはならないと思う。「命は大切だ」と直接言うよりもこの親子の姿から命の尊さが伝わってくる。

石田衣良さんの「真珠のコップ」。「スローグッドバイ」に収められていたから、読むのは2度目である。1度目と同じようにすがすがしさを感じる。人生は捨てたものではないなと思える世界である。

団 鬼六さんの「瘋癲の果て さくら昇天」。あり得ないような話だが作者の私小説ではと思ってしまった。あまりに純真な老人の姿に世俗的な価値判断は吹き飛ばされてしまう。そして「さくら」という女性がこの上なくすてきに感じてしまうのだ。設定はどこにでもいるような普通の人なのだが、作者の筆によって大変な魅力をもって描かれている。筆力とはすごいものだと思う。

アンソロジー。作者はそれぞれ違うが、同じような空気の流れるそれぞれの世界にたっぷりと浸ることが出来た。