XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

失敗談

shig552006-04-16

曇りときどき小雨の天気。商店の品揃えはすっかり春の装いに変わっているのに、天候はまだ冬を引きずっているような肌寒い今日このごろ。

先日、山に登ったときのことである。あともう少しで頂上というところで、靴に泥が付いて重くなってしまった。道ばたの石に靴裏をこすりつけてゴシゴシと泥を落とした。泥の固まりがぽろりと落ちて、足が軽くなった。やれやれと歩き出すと何かおかしい。両足のバランスがくずれる。
やおら靴底を見ると、踵がない。否、足の踵ではなく、靴のヒールが取れてしまっているのである。さらに靴の底がほとんど取れかかっている。靴底の崩壊である。
この靴は外見はとても丈夫そうで、キャラバンタイプで見てくれのよいものだった。靴専門店ではなかったが大変に安価で売られていたので、衝動買いをしたものである。一度ハイキングに使ったとき、指が当たるのでそのまま靴箱に入れていた。1年以上も前のことである。
その日、慌ただしく出かけるとき、このいきさつをすっかり忘れ、その靴を履いてきてしまったのだ。靴の壊れた地点は山の上、靴なしでは下山できない。途方に暮れてしまった。
靴が壊れたなど、恥ずかしくて人に言えることではない。どうにか自分で歩ける工夫をしなければならない。手持ちのものを確認し、ビニール袋やバンダナ、ハンカチなどを活用し、靴裏をカバーし、どうにか歩くことが出来るようにした。斜面を歩くので仮の靴裏がずれてしまう。何度も結び直しながらやっとふもとまでたどり着いた。

山の装備は事前の点検が鉄則である。手軽な山という侮りもあったのだが、大きな失敗である。外見では判断できない材質的な粗悪品であった。1年以上靴箱の中に放置しているうちに経年変化で脆くなり、山登りの途中で剥脱してしまったのだ。きちんとしたメーカー製であればさまざまなテストを繰り返しこのような事故を起こさない材質が使われているはずである。見てくれだけで安価なものに手を出してしまった私の失敗であった。幸い大きな事故にならなかったことを感謝し、教訓としたい。

本四架橋を成し遂げたメタルカラーの話を読むと、ケーブルの製作からコンクリートの開発など素材を巡ってさまざまな検討が行われ、厳しい環境の中で十分に耐えられるよう工夫されている。もの作りとは、そのような地道な取り組みの中からしっかりしたものが出来るのだと感心する。見てくれではない本物を作ることのすばらしさである。

私の情けない失敗談である。