XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

三角帆型のMLA

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MLAを三角帆のように伸展してみました

 

 MLA(Magnetic Loop Antenna)は波長に対してとても小さなループ(輪)とキャパシタンスによる共振によって電波を乗せるアンテナである。私はワイヤーを使って幾つものアンテナを作り実験してきた。効率は余りよいとは言えないが、太い銅管出なくても同調点が得られ、交信をすることができた。
 そこで、この輪をもっと大きくしたらどうだろうと考えた。デルタループというアンテナがある。1波長の長さのワイヤーをループにしたものである。給電部のインピーダンスが200~80Ω程度になるのでマッチング回路を入れて給電するようだ。効率が良く、ダイポールに勝るとも言われている。1波長の長さを用いることで共振させているようでMLAとは異なる動作原理だと思える。
 デルタループの場合、1波長のループと言うことで低い周波数帯の場合では大きなループになる。7MHzなら直径13m強、3.5MHzでは27mもの巨大なループである。そのため、デルタループは高い周波数帯での使用が多いようだ。
 MLAならもっと小さなループにすることができるが、効率は良くない。もしもっと大きなループにしたら、多少なりとも効率が良くなるのではないかと考えた。そこで、ヨットの三角帆のような形のループを実験した。グラスファイバーのポールを立て、その根本にキャパシタと給電部を置く。エレメントを横に引っ張り三角帆のような形に伸展した。給電はFT37#43のトロイドコアに3Tのコイルを巻き、その中をエレメントを通すようにした。最初は5Tで作ったのだがSWRが結構高く、調整の結果3Tに落ち着いた。
 数量的な比較はできていないが、小さなループよりは感度が良いようである。手持ちのワイヤー8.35mを使い、260pFのポリバリコンを入れている。ポールに3mほど沿わせて横にロープを使って広げている。これで7MHz、3.5MHz帯でSWRは1.2程度に整合がとれた。10MHzでも整合点は得られたがSWRは2.2と高めだった。
 ポールを立てて、近くの樹木などを利用してロープでエレメントを広げることで容易に設営ができる。手元で調整をすることができ、短い同軸ケーブルを使ってリグに接続する。エレメントやキャパシタに触れると整合点が変化するので、多少アンテナとリグの間隔は空けた方が良いようだ。
 アンテナの理論から言ったら邪道なのかもしれないが、「それでも電波は飛んでいく」ということを楽しむアンテナとして使っている。非常事態宣言の移動自粛が収まり、青空の下で気分良く遊べる日が早く来ることを望んでいる。

安心灯

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「安心灯」マグネットセンサーのライトを工夫した

 大きな揺れが長く続いた地震だった。二階で椅子に座っていたのだが、微かな揺れを感じ、「地震かな」と訝っているうちに揺れが大きくなり、家族に声をかけて部屋の真ん中にうずくまった。棚から小物がパラパラと落ちてくる。テレビを点けるがまだ速報は出ていない。タブレットスマホからは警報音が流れてくる。なかなか揺れが収まらない。不安になり声を掛け合っているうちにやっと揺れが収まる。10年前のあの地震を思い出す。
 その後情報が次々と入ってくる。最大震度6強のところもあるという。震源地を見るとあの地震と同じようなところだ。津波の惨状が頭をよぎるが、今回は津波のおそれもないようで少し安堵する。しかし強い揺れである、被害の状況が心配になる。
 
 テレビを見ていると停電が起きているという。信号機が消え、街灯が消え、家々の電灯も消えて街が暗くなっている映像が映し出される。地震によって停電がどのように起きたかは知る由もないが、明かりがないだけで恐怖と不安はいかばかりかと心配になる。私の地区では停電は起きなかったのだが、棚の上の「安心灯」が点灯していた。
 この「安心灯」はあの震災の後作ったものである。夜間に発災し停電になった場合、真っ暗な状況は心理的に恐怖が増大する。少しでも明かりがあれば気持ちを落ち着かせるのではないかと作った。100均の店で手に入れた、マグネットで点灯するランプに少し手を加えたものである。この商品の本来の使い方はクローゼットの内側などに取り付け、扉を開けると点灯するというものである。本体とマグネットが離れると、本体内部のセンサーが感知し、点灯する仕組みだ。マグネットが離れたら点灯するということに注目し、本体の上にマグネットを置き、地震で揺れたらマグネットが落ちるように工夫した。マグネットの重心を高くするよう人形を張り付けたのだ。こんな簡単なもので、明るさも僅かだが、暗闇になることは避けられると考えた。想定通りの動作をしたようだ。

 翌朝になり、各地の情報が報道されてきた。常磐道の法面が崩壊し通行止めになっているという。新幹線の架線が損傷を受け運航停止になっているという。それでも、マグニチュード7.3、最大震度6強という大地震であったのに被害を抑えることができたようだ。人々がさまざまな面で災害への備えを進めてきたことが役に立っていると考えたい。
 コロナ禍という災害の真っただ中だが、他の災害の発生もあり得る。想像力を働かせてできる限りの備えをしていきたい。

                                         このライトについては2012年にもブログに取り上げていた。

電報

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額表を使って電報の送受信をする

 NTTはその昔、電電公社と呼ばれていた。日本電信電話公社の略である。明治時代に東京と横浜の間を電線で結び、電話や電信のサービスが始まったことに由来する会社である。公衆への通信手段の提供という公的な事業であることから政府の直轄事業として設置され、国内の電気通信を日本電信電話公社(現NTT)が、海外との通信は国際電信電話株式会社(現KDDI)が担っていた。1985年の電気通信事業法によって民営化され、現在では多くの企業が担う事業になっている。 
 電信はペリーがもたらした電信機で有名である。電気通信は最初は電信による電報が扱われていたが、まもなく電話によるサービスも始められた。電報は1963年をピークに衰退傾向になり、今やデータ通信が主流になっている。
 電報は今では祝電や弔電が主流になっているが、昔は儀礼ではなく日常生活の通信手段として使われていた。電話機が普及していなかった当時、遠くに離れた人に急用で知らせを送る手段は電報しかなかった。電報局に依頼すると、電報局同士で通信が行われ、相手に近い局から電報配達員が直接その電報を届けてくれた。郵便よりもずっと早く届けられる通信手段だったのである。また、船舶など有線で繋ぐことのできないところにいる人には無線局同士で電報の送受が行われた。

 今の電報はデータで送受されているが、当時の電報は手送り電信によって一文字ずつ送受された。本文の字数によって料金が決まるので、できるだけ短い文字数で内容を伝えることが必要であった。
・サクラ サク  試験に合格したことを知らせる電報。ちなみに不合格はサクラ チル
・ケサ七,一0オンナアンザン」ボシイゼウナシアンシンセヨ」 女の子の誕生を知らせる電報
・サチ(サイワイ)エ(エダ)トメイメイス」  幸枝と命名したことを知らせる電報
・オネガイノケンイカガナリシヤ、ウナヘン 至急返事を求める電報
・ワレ3ヒマデニカエルヨテイ  3日までに帰る予定を知らせる電報
・サクデンウケタ」ホンセントウケウニチヨクコウス」センテウ 船長から昨日の電報に応えて東京に直行することを返事する電報
・アスコ八ジテウケウエキニツク、ムカエコウ 明日午後8時に東京駅に着くので迎えに来てほしいという電報
 
 今ではメールやSNSなどにより個人同士が情報のやりとりができる時代になったが、公衆通信を利用しなければ情報を送ることができなかった頃、電報は最速な唯一の通信手段だった。その大事な一文字一文字を和文モールス符号の手送り電信で送受していた通信士の方々の活躍によって成り立っていたシステムである。今では和文モールス符号を使う通信はごく一部でしか行われなくなってしまった。その人たちが鍛錬を経て身につけた技能をぜひ残していきたいものである。電文の短い言葉の中に人々の深い思いを感じるのだ。

アンテナ線をまとめるアイディア

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8の字巻きでアンテナをまとめる

 電波を放出するアンテナは、使う周波数によって大きさが決まってくる。低い周波数ほど長くなる。アマチュアが使っている短波帯の電波で、いつも賑やかな7MHz帯では、波長がおおよそ40mになるので使うアンテナの長さも20mは欲しいところである。途中にローディングコイルなどを入れて短縮するやり方もあるが放射効率は落ちてしまう。
 電気抵抗の少ない導体を波長に合わせて高い位置に設置することで効率の良いアンテナとすることができるのだが、太く長い電線は嵩張る。また、長い線は絡みやすく、まとめる場合には巻き枠などを使って絡まないようにする必要がある。移動運用の場合、できるだけ荷物を少なくしたいのだが、このアンテナ線が結構大きな荷物になってしまう。

 QRP(小電力)での運用では小さな出力の電波をできるだけ放出できるように、可能な限り長いアンテナを使うことが多い。しかし、QRP機が掌に乗るほどのコンパクトさであるのにアンテナが嵩張ってしまってはバランスがよくない。多少電気抵抗が高いことを我慢して細い線を使ってアンテナを作った場合でも、長い線を絡まないようにまとめるには工夫が必要である。巻き枠を使うのが一般的だが、その巻き枠が邪魔なのだ。そこで、巻き枠を使わなくても絡みにくい収納法を考えた。

 長い線をコイル状に巻いた場合、伸展しようとしたとき線同士がお団子になってしまうことが多い。その塊を解いていくのに時間がかかる。お団子にならないように、巻いた線同士が離れている巻き方をすればよい。そこで、巻き線を重ねる時に重なり合わないように交差させて重ねる巻き方、すなわち8の字に巻いてみた。すると、束ねた線を開放すると線同士が広がりお団子になりにくいことがわかった。
 20mほどの長さでも、細い線であれば親指と小指の間で8の字に巻いていくと、巻ききることができる。線の端で重ね合わせた8の字の交差部分を線の端でぐるぐると巻くことでまとめられる。さらにその上をベルクロなどのテープで押さえておけばしっかりとした収納になる。
 線だけでまとめているので巻き枠などに巻いた場合よりも柔軟性があり、荷物の隙間などに押し込むこともできる。なによりも用具も必要なくコンパクトなのがメリットである。 トランスフォーマーとコネクタを一体化したEFHWやベースローディングコイルを取り付けたコネクタのバーチカルアンテナなど、コンパクトなアンテナを作ってきたが、最近はもっぱらこの方法でアンテナ線をまとめている。
                        まとめ方のpdfはこちら
 移動運用は山や川べりなど自然の中に行くのだが人の移動を自粛する風潮の中でなかなか移動がしずらい状況が続いている。コロナ禍の早い終息を切に願う。

送信機の増設

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キットを作り上げたら増設手続きが必要

 

 新しいリグが組みあがった。しかし、日本の法律では無線局で使われる送信装置は事前に検査を受けて技術的要件を満たしていることを確認し、許可を得たものでなくては使用することができない。メーカーで売られている無線機は技術適合認定を受けたものがほとんどなので、どのメーカーのどの機種を使うかを届け出れば許可が下りる。しかし、自作機や外国製の機器では自分でそれらの手続きをしなければならない。
 電波環境をきれいにしておくためには致し方のない措置ではあるが、自分で作ったキットの場合、このリグが規制に適合したものであることを証明し、その旨の保証認定を受け、さらに新しい機器の増設という届け出をしなければならない。厄介なことである。

 スプリアス規制が強化され、それをクリアしなければならない。スぺクトラムアナライザーという測定器で調べるのだが大変高価で個人で購入するのは難しい。そこでJARD(日本アマチュア無線振興協会)の測定室をお借りすることにした。とは言っても、高価な機器を自分で操作できるはずもなく、持参したリグを操作し、測定は担当の方にしていただくのだ。部屋の使用料という名目で2200円を支払うのだが、測定データーをいただけるので、それを保証認定の資料として添付することができる。保証認定が得られれば、総合通信局に新しい送信装置の増設として届け出をすることができる。

 事前に予約をし、測定室を訪ねた。担当の方が測定器の並んだ部屋に迎え入れてくれ測定が始まる。規定の周波数で送信できるようにセットし、断続波を送信するための装置を取り付ける。信号の帯域幅や近接スプリアス、広域スプリアスなどを測定する。一番問題になるのは第2高調波だが、これが規定値内に収まっていればほぼ適合と認定されるようだ。測定データをいただいて退出する。時間的には1時間もかからなかった。

 この適合とされたデータと送信機の系統図を添付書類として、総務省電波利用電子申請・届出システムliteのサイトから設備変更の申請書類を作成する。ただし、総務省への送信はせず、データを保存しておく。次にJARDのアマチュア局基本保証のサイトから保証認定の申請をする。この際、総務省のサイトで作成した届出のデータを添付することになる。
 保証認定が行われ、認証が得られるとその旨のファイルがJARDから送られてくる。そのファイルを保存してある届出のデータに添付し、総務省のシステムに送る。審査の状況はサイトから確認することができ、審査が終了したことがわかったら、所轄の総合通信局あて免許状を送ってもらうための返信用封筒を送る。免許状が届けば新たな送信機の増設手続きが終了である。

 メーカー製のリグならば直接総務省に届出をすればよいだけなのだが、自作機やキットの場合には煩雑な手続きが必要なのだ。費用も掛かり、ほぼキットの値段と同じくらいかかってしまう。自作は楽しいのだが、このような環境は自作派には厳しいものがある。  

2ターンMLA

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ワイヤーで2ターンのMLAを作ってみましたが・・・

 本来なら太い銅管で作るべきMLAだが、あえてワイヤーで実験している。1ターンのMLAの場合、キャパシタを接続する対極の位置に給電点を置くことが多い。調整しやすいようにキャパシタを下側に配置すると、給電点は上部になり、同軸ケーブルが伸びることになる。給電点をキャパシタのある下側に置ければ重心が下がり設置しやすいMLAになる。そこで、エレメントを二重にして2ターンのものを作ってみることにした。

 バラックの状態で4mのワイヤーを2ターンにしてキャパシタを繋ぎ、測定してみるとしっかり同調点が見つかった。これまでの1ターンの実験から複数のバンドで使えるMLAができるはずだと考えた。多重のエレメントを使った場合の製作例を見るとエレメント同士の間隔を開けて空芯コイルのような形状にしている。私の場合、ワイヤーを使っているので二重のエレメントをゴムのチューブの中に収納してしまうことにした。
 組み上げて測定してみると80m、40mバンドの同調点は見つかったが、それより高い周波数帯では同調点を見いだせなかった。エレメント同士が密着することからインダクタンスが大きくなり、それにより同調するためのキャパシタンスが小さくなりすぎてしまったようである。仮配線で試した結果とは異なり、密接した2ターンの輪の大きさに強く依存した同調になることがわかった。
 想定した仕様とは異なってしまったが、4m長を二重にしたMLAで3.5MHz、7MHzに同調点が得られた。3m長を二重にしたもので7MHz、10MHzの同調点が、2m長を二重にしたものではポリバリコンを使ったが7MHz、10MHz、14MHz、18MHzでの同調点が得れている。それぞれ受信ではそれなりの感度を得ることはできたが、送信については効率が悪いようだ。それでも4m長を二重にしたMLAでは2WのQRP機で3、7エリアの局と繋がることができたが、RSTは319という状況だった。
 アンテナアナライザーでの測定では各バンドのSWRは低く、使えそうなデータである。しかし、QRPを想定した部品を使っており、放射効率がとても低いと思われるので、SOTAのような、よほどロケーションの良い所からのオンエアーでないと運用は難しいだろう。

 ともあれ、エレメントを二重にして、給電点を下側にしたMLAということで実験をしたが、エレメント同士の間隔という盲点を突かれ、思い通りの結果にはならなかった。それでも、MLAというコンパクトなシンプルなアンテナについて学ぶことがたくさんあった。モノづくり、実験はおもしろい。「それでも電波は飛んでいく」という意外性の楽しさを追いかけていく。

 さて、ここまで実験してきてふと気になることが。以前作った、チューナーを使った給電の場合、キャパシタのすぐ脇で給電していたことを思い出した。給電部は上でなくてもいいのでは・・・。実験してみると輪にしたエレメントのどこで給電しても、状況は変わらないことがわかった。というわけで、2ターンMLAは給電点を下にすることとは関わりなく、コンパクトになることだけがメリットというお粗末。

新年おめでとうございます

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ナンテン 疫病の早い終息を願って

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HR HR <ホレ>
アケマシテ オメデトウゴザイマス」
アクリヨウ タイサン」
(CW FOR EVER)
<ラタ>

今年は穏やかな年でありますように