XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

QRP QSO

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QRP QSO QSL

 

 QSLカードが届いた。JARL(日本アマチュア無線連盟)から2か月ごとに届く交信証である。無線を使って交信をしたことを互いに確認し合うために交換する。アマチュア無線大自然の伝播を介したものなので、不安定な交信が多い。相手のコールサインと信号強度などのレポート(RST)が交換できれば交信が成立したものと見なされる。その証明が交信証なのだ。
 届いたカードの中で目に留まるものがあった。QRPの実験をしていた時のものである。海外から購入したキットを組み立てたトランシーバーで、水晶発振子を使った、単一周波数のダイレクトコンバージョンのものである。出力は電池2本で概ね0.8W程度出ていた。このリグで交信しようとCQを出したのだ。アンテナは地上高約5mのEFHWという20m程のワイヤーの端から給電するタイプであった。
 そのとき、応答してくださった方から届いたQSLカードである。そこには小さな字でびっしりとそのときの状況が書かれていた。南アルプス市の方で、私と同じように小電力での運用で0.5Wと書かれていた。アンテナの図も描かれていて、地上高33Ftのダブルバズーカというものだという。給電部が工夫されたダイポールアンテナのようだ。
 さすがにQRP同士の交信は厳しくて、交信は成立したものの詳細についてはその時点ではよく解読できていなかったとのこと。すべて録音して何度も聞き直して、書き起こしてくれていた。1分30秒ほどの交信だったようだが、ここまで記録してくださったことに感謝である。
 QRPでの交信では、相手の方に微弱な信号を読み取っていただかなくてはならず、大変のご負担をお掛けする。しかし、その微かな電波でも相手に伝わり何らかの意思の伝達ができたときの喜びは大きい。微弱な信号ゆえ、無視されることも多いのだが、お相手くださる方がこの喜びを理解してくれ、伝播の面白さを共有してくださることを感謝したい。

 モールス符号もそうだが、アマチュア無線には自己鍛錬の要素がたくさんある。興味あることに対して、追求し、試行錯誤し、学び、工夫し、訓練し、経験を積んでいく。人間の持っている力をより高めていこうとする面白さがある。ある意味、自己実現への道なのかもしれない。
 一枚のカードを読みながら、相手の方も同様な思いでアマチュア無線を楽しんでいらっしゃるだろう姿が窺えた。チャレンジ、それはエンターテインメントでもある。

これだけで交信できる?

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Go Bagの中身、これだけで交信できる?

 

 以前のブログでGo Bagのことを書いた。必要な機材を一つにまとめて運用するスタイルである。いかに最小限の装備にするかが大事なので、アンテナのマッチングについては受信ノイズを最大に調整するということで、機材には含めていなかった。しかし、実際に運用しているとMLAでははっきりと整合点が探れるが、ロングワイヤーなどではどこが整合点なのか解りづらいことがあった。相手の信号は聞こえているが、こちらからのシグナルは相手に届いていないようで、なかなか応答をもらえない。QRPでの運用なので微弱な電波なのだが、さらにアンテナから効率よく放射されないのだ。
 QRPだからこそ、整合をしっかりとる必要がある。アナライザーを使えば、グラフ表示されるのものもあるので、調整が容易にできる。しかし、アナライザーを装備に加えるのは嵩張りすぎる。もっとコンパクトなものが必要である。
 整合の状況を見るのにはリグ側から見て、アンテナのインピーダンスが50Ωになっているかを見るブリッジ回路を使う方法と、アンテナへの進行波と反射波の様子を見るSWR計を用いる方法がある。
 ブリッジ回路の場合、リグとアンテナの間に挿入したままでの運用は損失が大きくなる。SWR計の方が損失が小さいようだ。運用していてアンテナ系にトラブルが起きてSWRが急に上がってしまうような場合でも警報装置として役に立つ。簡易的なSWR計をコンパクトに製作して装備に加えることにする。
 出来上がったSWR計は親指の先ほどの大きさで、収納したアンテナ線の間に割り込ませればバッグの中に入れることができる大きさである。実際にアンテナの整合をやってみた。受信ノイズが一番大きくなるところにチューナーを調整し、送信機から電波を出す。この電波を出さなければならないところが他局への迷惑になる恐れがあるのでデメリットである。その周波数を誰も使っていないことを確認し、短時間で調整を行う。チューナーのダイヤルを回して赤のLEDが最小輝度になるところを見つける。最初は赤と緑のLEDが点灯している状態だが調整をしていくと赤が消え、緑が明るく点灯するところが見つかる。
 受信ノイズの最大点を探しての調整よりも数段容易に調整ができるようになった。最小限の装備での運用を目指しているが、この計測器は必要だと思う。もう少し収納スペースに余裕があれば赤のLEDをデジケータに変更したSWR計が使いやすいかもしれない。
 写真はGoBagの中身を示したものだが、写真の左上がすべてを収納したGoBagとアンテナポール、その下がチューナーの後ろ側で、各バンドでの整合するダイヤルの位置をメモしている。右側がSWR計である。
 これだけで交信ができるとは必ずしも言えない。なぜなら、HFでの交信は電離層などによる伝播条件に大きく左右されるものだからである。コンディションに恵まれれば、こんな小さな装備でも交信を楽しむことができる。

Capacitor Mag Loop

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Capacitor Mag Loop Tuner

 それはある画像を見つけたことから始まった。MLAのデータを検索していた時である。画像のまとめをしているサイトに見慣れない回路を見つけたのだ。ループアンテナなのだが、スモールループやトロイドコアでの給電ではなく、キャパシター部分から給電している。ループアンテナなのだろうかと眺めていると、そこにMag Inpedance Matchingという文字があることに気づいた。マグネチックループの一種のようである。
 そこでさらに検索を進めると同じような回路だと思われるものがMFJからQRP用の9232やハイパワー用の933、935B、936B、という製品で販売されているのを見つけた。
 これまで作ってきたMLAとは異なる給電方法なのでどのような動作になるのか試しに作ってみることにする。回路は単純だが、どのような部品を使うかは不明である。手持ちのものを組み合わせてとりあえず実験した。この回路では二連のキャパシターが使われている。手元にあったのは40pFの二連ポリバリコンである。これとEFHWチューナーなどで使っている一連の260pFポリバリコンで組むことにする。MFJの製品を使っている方からの情報ではループになるワイヤーの長さが使用するバンド毎に推奨されているという。とりあえず18MHzバンド用の長さと言われる2.75mのワイヤーを組み合わせてみた。
 アナライザーで測ってみると、24MHz、21MHzで整合点が見つかった。2つのキャパシタを交互に動かしながら最良点に絞り込んでいくようである。1つのキャパシターを使うMLAのようにLCによる共振点を探るのではなく、もう一つのキャパシターでマッチングを行い同調点との相互作用の中から最良点に追い込んでいくようである。18MHz用ということでループに使うワイヤーの長さを決めたのだが、二連のポリバリコンを最大値にした辺りでやっと整合を得ることができた。どうやら40pFという値はこのループでは小さすぎるようである。
 部品の定数がわからず、試行錯誤での実験であったが、アンテナとして整合点が得られることまでは判明した。リグに取り付けて受信してみたが、明らかに利得は低いようである。送信もできるようだが、コンディションにも恵まれず、交信には至っていない。
 
 このアンテナのメリットは給電点がキャパシターと一緒の位置にあるので、ループの設置がより自由になることである。木の枝に引っ掛けて、左右に輪を広げるような支えを入れれば、一番下にチューナーを置くことができ、調整が容易である。
 理論的なことは全く分からず、実験だけを頼りに楽しんでいるのでとんでもないことをやっているのかもしれないが、いろいろと探っていくのが楽しみなアンテナである。

トラブルシュート その4

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Whip Ant Dpもどき

 外出自粛が続いている。都県を跨いだ移動は心理的な圧迫があり出来そうもない。東京では他府県ナンバーが走っていても何の違和感もないが、地方に行くと練馬・品川・足立など東京のナンバーを見かけるとあまりいい顔をされなくなっている。早く収束してほしいものである。

 野外運用に出かけられないので、部屋の中での実験をしている。以前作ったアンテナのテストをした。2本のホイップとチューナーを組み合わせて複数のバンドに出られるようにしたものである。バンドを設定しリグにつないで運用していると急にSWRが上がってしまう現象が起きた。リグから取り外し、測定してみると正常である。繰り返していると時々思いもよらない値を示すことも出てきた。どこか不具合が起きてしまったようである。 簡単な回路なのですぐ見つかるだろうと、ケースを開けてみる。目視で確認するが外れている個所は見当たらない。中身の見えない部品はポリバリコンだけである。リグの出力を大きくして送信した後、不具合が出ていたようにも思う。内部の絶縁が損傷してしまったのだろうか。ともかく、2つのポリバリコンを交換することにする。
 交換が終わり、動作確認をすると正常に働くときもあるのだが、時々不具合が起きている。ポリバリコンが原因ではなかったようだ。作業を進めているとき、1本の線が外れていることに気づく。配線については何度も確認しているので外れたのは直前のようだ。改めてハンダ付けをして接続するとそれまで起きていた不具合が起きなくなった。その配線はコネクタのGNDに接続される配線だった。これが接触するか離れるかという接触不良の状態になり不具合が起きていたようである。目視ではわからなかった。線が外れて初めて確認できた不良個所である。
 トラブルシュートの基本は目視ではあるが、目視ではわからない接触不良もある。テスターを使ってしっかり導通を確認していればわかった不良である。また、正常に動作するときと不具合が出る時の状況から考えればこの接触不良は想定できたはずである。しかし、回路が単純で安易に取り組んでしまった結果、部品交換など余計な作業をしてしまった。基本通りの手順を踏んでいればと反省する。
 
 改めてこのアンテナをテストした。40mから12mまでのバンドで整合が取れることを確認する。短いホイップであるので効率という点ではあまり期待できない。高い周波数ならそこそこ飛んでくれそうである。部屋の天井から吊るしたこのアンテナでコンテストのCQを出している局に呼びかけてみる。何回かの呼びかけで応答がもらえた。山の上などロケーションの良いところで使ってみたい。一日も早く移動自粛が緩和され、この鬱陶しい雰囲気が晴れることを願いたい。

手すさび

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パラコードを使ってのロープワーク

 手遊びと言っても、賭博のことではない。文字通りの手での遊びであり、時間つぶし、手慰みである。パラコードという4mmφほどの太さのコードを1本持っていると結構時間がつぶせる。さまざまな結び方があり、なかなか奥が深いからである。
 その太さや材質、用途などによって紐・コード・ロープ等々いろいろな名称があるが、結び方はロープワークと言われている。ロープは手の延長のように、ものを押さえたり、結びつけたり、固定したり、繋げたり、いろいろな役割を担うことができる。ロープは道具であり、それをどのように使うかは使う人に任されている。逆に言えば使い方がわからなければ役に立たないものである。そのため、それを必要とされる場ではさまざまな使い方が工夫され伝承されてきた。そのどれもが美しい造形である。使われ方に応じて太いものもあり細いものもある。登山や救助などの場面では命を預ける太く丈夫なものが使われ、キャンプなどでは生活を便利にする時には細引きと言われるものが使われる。
 その結び方を楽しむのだ。先人たちから伝えられた結び方を思い出しながら試してみる。手順が一つ違っただけでも異なる結び方になってしまうので、思い通りに結ぶのは難しい。結びにならないこともある、似ているが何か違うこともある。試行錯誤をしながら結び目を作っていくうちに時間が経ってしまう。

 最近覚えたのは「叶結び」である。一方から見ると「口」の形で、後ろ側から見ると「十」の形になっている。「口」と「十」で「叶」という字になることから名づけられたという。できてしまえば簡単な結びなのだが、ほんの少し手順が違うと「叶」の形にならない。繰り返し繰り返し結んでいき、思い通りの形にたどり着くように練習する。試行錯誤をしながら結びの全体像を探っていく。
 「粉屋結び」というのも見つけた。粉を入れた袋の口を紐で綴じる結び方である。片方の手で袋の口を押えながらもう一方の手で紐を巻き付けて口を綴じる。手を放してしまえば袋の口が開いてしまうので、口を押えながらいかに紐を巻き付け固定するかがポイントである。粉屋さんは無意識のうちにやっていた動作であろうが、確実にできるようになるまで繰り返し練習するのも手すさびである。

 本結び、男結び、もやい結び、8の字結び、ふた結び、巻き結び、ひばり結び、引き解け結び、蝶結び、よろい結び・・・ それぞれの結び方のバリエーションも豊富である。思いつくままにコードを弄っていると時間を忘れてしまう。頭と指先を使う老化防止の手すさびである。

コンテスト その2

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QRPでもコンテストなら交信できる

 このところコンテストづいている。6mアンドダウンというコンテストがあった。名前のように6mバンドの50MHzよりも波長の短いバンドでのコンテストである。
 50MHzバンドはその昔、入門バンドであった。バンドの幅が4MHzと広く、波長が6mという手ごろな長さであるので、アンテナの工作にも、さまざまな実験にも手ごろなバンドだったのだ。電波の種類も多様でAM、SSB、FMそしてCWとそれぞれの周波数で住み分けていた。特にアンテナ工作は手ごろな長さで扱えるので、いろいろな種類のアンテナが実験されていた。
 私もアマチュア無線を始めたころ、HFは未知の世界で近づきがたく、50MHzで運用することが多かった。スクエアロー、ヘンテナ、ダイポール、HB9CV、ヘリカルホイップなど自作を楽しんでものである。
 
 さて、最近はHFでの運用が主で、VHFやUHFにはほとんど出る機会がなかった。今回のコンテストで困ったのはアンテナである。急遽、用意しなければならない。まず50MHzは手持ちの伸縮ホイップアンテナを2本組み合わせてダイポールアンテナとした。本棚に沿わせて設置した。144MHzは当初、15cmほどのヘリカルホイップで運用していたが、如何せん飛ばない。そこで64:1のトランスを噛ませたロングワイヤーを試してみたが、飛んでくれない。なかなか調整ができないので、試しに50MHzのダイポールを繋いでみたところ、そこそこ電波が飛んでくれた。とりあえず、これを使うこととする。430MHzは以前、FMで使っていたコーリニアアンテナがベランダに取り付けたままになっていたのでこれを使うことにした。しかし、今使っているリグのアンテナ接栓はBNCである。変換プラグを使わなくてはならない。いくつかの変換プラグを組み合わせてどうにか接続した。損失が大きくなっているようだが仕方がない。
 急ごしらえの設備でのコンテスト参加となった。モードは電信である。普段、ほとんどシグナルを聞くことのないV/UHFのバンドも、この時ばかりは賑やかである。数ワットのQRPでも相手にしてもらえる。バンドの中を一通り呼びまわって、新しい局が見当たらなくなると次のバンドに移る。そんな運用で半日を楽しんだ。局所的に突発的に発生する、極度に電子密度の濃い電離層、スポラディックE層(Eスポ)が出たようで、50MHzでは九州の複数の局とコンテストナンバーの交換をした。また、HFではあまり繋がることのなかった近隣の局とも交信することができた。
 コンテストは得点を競うのが主体なのだが、イベントとして楽しめるのもよいものである。ウィズコロナで外出自粛をしている中ではあるが、工夫をしながら生活を楽しんでいる。

 

コンテスト

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シンプルなパドルでも実戦で活躍した。

 

 あるコンテストに参加した。アマチュア無線でのコンテストは、一定のルールの下に交信することができた局数を競うものである。従って、より広く、より多くの局と交信するためには電波をより強く出す方が有利である。大電力と数十メートルの高いタワー、フルサイズのアンテナ、指向性のある何段にも重ねた八木アンテナなどが使われることもある。さらに通信技術や長時間の運用に耐える体力も必要である。
 一方、コンテストには別の面もある。普段お空に出ることの少ない方も参加されるので、初めての方と出会える機会でもあるのだ。コンテストが始まると静かだったバンドがたくさんの局に埋め尽くされる。選り取り見取り、繋がりそうな局を見つけて呼びかける。これまで交信したことのない土地から出ている局と繋がることもある。交信の幅を広げることもコンテストの楽しみである。
 コンテストではルールに従った交信内容を送受する。今回のコンテストではRSTというシグナルレポート(了解度・信号強度・音調)と運用地点を示す番号、そして年齢を示す符号を送ることになっていた。年齢は10代はA,20代はB、30代はCという具合である。女性の場合には年齢を聞くのは失礼という意味合いからかYという符号が用いられている。
 24時間に亘って行われるコンテストだが、私は上位入賞を狙っての参加ではないので、時間の取れるところで参加した。伝播のコンディションが良かったのでいくつものバンドで初めてお会いする局とも交信できた。結果は23局だったが、年齢構成を見てアマチュア無線を楽しんでいる方々の状況を垣間見る思いがした。若い方たち、年齢符号でいうとAからDの方とは1局も交信できなかった。50代の局が4、60代の局が6、70代の局が10、80代の局が2、そして女性局が1という集計である。

 携帯電話もインターネットもなかったころ、科学技術に憧れて無線を始めた人たちである。神田や秋葉原の露店で真空管や部品を探し回り、様々な雑誌から情報を集め、同好の人のお宅を訪ね、作ることの面白さ、工夫することの楽しさ、そして自ら手掛けたもので交信できることの喜びに夢中になった人たちである。

 コンテストという些細な機会ではあるが、アマチュア無線の状況がはっきり表れているように思う。50代以前の若い方が少ないのだ。アマチュア無線は不確実性を楽しむものである。今の電波事情は極超短波が主体で、確実な通信が当たり前になっている。携帯電話にしてもインターネットにしても、通信できるか否かよりその内容が主体である。コンテンツを楽しむ時代になっている。
 無線技術の底辺を支えてきたアマチュア無線の楽しさを若い世代にいかに伝えていくから課題になってきている。
 因みに、私の送った年齢符号はGで、今回交信いただいたの中ではマジョリティである。