XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

アンテナアナライザー2

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 ネットを彷徨っている時、以前作ったアンテナアナライザーがバージョンアップされているのを見つけた。基板が改良され、作りやすくなっている。MPUがPICに変更され、プログラムがプレインストールされてキットに入っているとのこと。機能が強化され、6mバンドにも対応している。さらに、昔、購入した時は送料を含めて$145AUDだったのだが、今回のものは$105AUDと安くなっている。
 アンテナアナライザーがなくて困っているわけではないのだが、キットへの技術的な興味をそそられ、購入の申し込みをしてしまった。入金を済ますと、開発者のjimから発送した荷姿の写真が添えられた返事が届いた。前回はアデレードのクラブからの購入だったが、今回はVK5JST本人が対応してくれているようだ。10日ほどして品物が届く。手作り感たっぷりで、発送伝票も手書きである。すべての部品がケースの箱の中に緩衝材と共に入れられていて、部品も小袋に分けられている。詳細なマニュアルが添えられていたので、製作には困らないようだ。
 しばらく放置していたのだが、時間を見つけて製作に取り掛かる。PCBやフロントパネルをテンプレートとして、ケースの穴あけ位置を決めておく作業から始めるよう指示されている。通常のキットでは、基板を作り上げてから、どんなケースに収めるかを決めていくのだが、ケースを含めてのキットの場合には、この方法は理にかなっている。PCBが平面のうちにケースに沿わせて穴あけ位置を決めておけば、誤差なく作業をすることができる。まず、機器を収めるケースが出来上がった。
 すべての部品がスルーホール部品で、表面実装部品のように虫メガネを使わないと扱えないようなものではないので、PCBは半日ほどで出来上がった。ただし、抵抗器のカラーバー表示は間違えやすいので、テスターを使って数値を確認したため、部品の確認作業に結構な時間を費やした。PCBの部品取りつけ面に取り付ける部品の種類がシルクスクリーンで表示され、コンポーネントオーバーレイがマニュアルに示されているので、前回のキットと比べて格段に作業がしやすくなっている。
 スタートアップもテストポイントの電圧を指定の値に調整するだけで、おおむねの精度を出すことができる。
 野外での使用を前提に、今回は電池内蔵の仕様になっていた。12Vを得るために、単三電池8本を収納する構成である。結構、電池で重くなってしまいそうなので、Litium-ion電池で14500タイプ3本を使うことに変更した。また、出力がNコネクタ仕様になっているが、普段私が使っているのがBNCであるので、これも変更した。

 アマチュアなりのアンテナ工作には使えそうである。アンテナアナライザーはグラフ表示のものが使いやすいのだが、こうしたアナログの連続した周波数でアンテナの状態を知る機器も頭の体操として良さそうである。

 

製作記事

反省、始業点検は慎重に

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赤城高原ブルーベリー


 やっと梅雨が明けたということで、赤城高原にブルーベリー狩りに行ってきた。時期的にはもう盛りを過ぎているのだが、少しは残っているだろうと出発した。今年は長雨が続き、ブルーベリーも実り方がよくないのだという。晩性の種類が実り始めているのだが、ほとんどの木は疎らに実が付いているのみで、その下にたくさんの実が落ちていた。果樹園の方の話では雨が降って実が濡れている状態では収穫ができないのだという。実が濡れていると痛み易く出荷することができない。そこで収穫をせず、実が落ちるのを見ていたのだとのこと。「今年は大損害だ」との言葉が重い。

 それでも、ブルーベリー狩りをさせていただいた。摘みながら口に入れ、甘酸っぱいおいしさを味わえることに喜びを感じた。
 実は、家を出発し、関越道練馬インターを入って走っていると、車の中でいつもと違う音がするのが気になった。何の音がだろうと考えていて、シーリングファンの蓋を開けたままだったことに気づいた。車内の暑い空気を排出するために荷室の天井にファンを設けている。その蓋は走行時には閉めておくべきなのだが、開けたままだったのだ。三芳SAに立ち寄り、しっかりと閉めた。くるまの周りを一回りし、異常がないことを確かめた。本線に戻り走っていると、音は小さくなったもののまだ続いている。カタカタという音である。高坂SAに入り、荷室内を点検する。シーリングファンのカバーを留めているビスが緩んでいることがわかり締め増す。また車の周りを一回り確認する。以前、タイヤがパンクしていたのに気づかず、そのまま走行し、タイヤを駄目にしてしまった経験があり、タイヤの目視には気を付けているのだ。本線に戻り、東松山インターを過ぎた辺り、中央車線を走行していた。突然、バーンという大きな音。その後バタバタという音が続き、ガリガリという音がして運転が不安定になった。慌てて左車線の後続車を確認し、路肩に車を寄せて停車する。左後輪のバーストである。
 気持ちを落ち着かせて、状況を確認していると、公団の工事をする車のような黄色い車が後ろに止まってくれた。黄緑色の旗を出し、作業着の方が後続車に危険を知らせながら近づいてきてくれた。「非常電話でパトロールに知らせなければ・・・」と言うのだが、見える範囲には非常電話が見当たらない。すると、「ガードロープの側に出て待機してください」と指示をくれ、ご自身の携帯電話で連絡をしてくれた。
 しばらくして、公団のパトロールカーが来て、後方の安全を確保してくれた。タイヤを取り換えれば走行できるとの判断から、スペアタイヤと交換する作業を行う。作業着の方とパトロールの方が率先して作業を進めてくれた。また飛び散ったタイヤの破片を回収したり状況処理をしてくれた。おかげでまた走行することができたのである。
 いったんは今日の予定は諦めて引き返すことも考えたのだが、カタカタという異音もなくなり平常通りの走行になったので、そのまま赤城まで来てしまったのだ。
 他の車を巻き込む事故にならず、多くの方のお蔭で味わうことの出来たブルーベリーの味は格別であった。お名前を伺うことの出来なかった作業服の方には心からの感謝の気持ちでいっぱいである。
 バーストの原因は空気圧の低下であるといわれている。気を付けていたつもりではあったが、目視だけではなく慎重な始業点検の大事さを思い知った。

ロマン


 壮大なスケールの抗争とドラマティックな筋立てを縦糸とし、青春の叙情性と深く湛えられた神秘性などを横糸として織りなされた(長編)物語。
 厳しい現実(退屈な毎日の生活)に疲れがちな人々が潤いとして求めてやまない世界。また、それを求める心。
 三省堂新明解国語辞典第5版によると、このように書かれている。私の感じているのは後者のようである。大きな設備と電力で遠距離との交信を狙うのではなく、より貧弱な設備と電力で、ほとんどの要素をその時の伝播状況に依存して交信できることを狙う。自力よりも自然の力に頼った交信。頑張ったからできたのではなく、たまたま条件がそろったからできた交信。QRP通信を私はそのように捉えている。
 新スプリアス規制が2022年12月から施行されるに伴い、その基準に適合していない機器は使えなくなる。現在、総通に登録している機器を、それ以降も使っていくものと、飾りにするものとに振り分けなければならなくなった。新基準に適合していることが認証されれば2022年12月以降も使えるわけである。私のほとんどの機器は自作であり、実用性よりもロマンを求めるものである。普段ほとんど使わないものであっても、ロマンを求めて使うつもりなら認証を受けなければならないのだ。
 もともと、この新スプリアス規制は、携帯電話やItoTなどの微弱電波使用機器が生活の中でさまざまに使われるようになり、電波資源の枯渇に伴いよりクリーンな電波環境を作らなくてはならなくなったのが理由のようである。その主目的は、それら携帯電話やItoT、ネット接続機器の相互干渉を防止するための対策であるのだが、電波法の枠内では、同じ無線局としてアマチュア局にも同様な網がかけられることになるのだ。
 

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手作りしたQRP機器


JARDに持ち込んで0.5Wや1W出力の機器を測定してもらった。いくつかの機器は基準に適合しないことがわかり、お蔵入りが決定した。QRP機でも実用性を増すように出力を大きくした機器に問題が多かったようだ。しっかりと設計された機器は新基準に適合することが認証された。認証された機器によって私のロマンは生き残ることができた。このところ自分の気力と体力が落ちてきて、どこまで楽しめるかはわからないが、ロマンは失いたくない。

石を立てる

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雨の日でも、部屋の中で遊ぶ



 このところ、この遊びにはまっている。昔河原でやった石積みの延長である。違うこところは、部屋の中であり、石を乗せるのではなく立てることである。
 なんの変哲もない石。その長点を見極め、もう一つの石の上に立てる。どこかにある、重心を支える3点を探して、試行錯誤するのだ。両手で石を支え、その力を抜いていく。石は傾いてしまう。接するところを変え、繰り返す。すると、ある1点で手の力がすーっと抜けることころがある。石が立った瞬間である。結構しっかり支えられていて、石は立ち続けている。達成感がわき上がる時である。
 単純な作業であるが、結構集中して楽しい。何回も失敗を繰り返し、重心を支える1点を探す。無心になれるのがいい。何も考えず、ひたすら作業に没頭する。これがリラックスできるのだろう。日々さまざまな煩悩に取り囲まれている中で、すべてを忘れ、無になって集中する。そして、その1点が見つかった時の達成感がたまらない。
 石の表面にはさまざまな凹凸がある。2つの石が重なった時、立てた石の重心がその3点の真上に来た時、石は立つ。その3点がどれなのか、手の感覚で探っていく。山や河原で拾ってきた石である。標本になりそうな石やきれいな形、色・模様の石だということでつい集めてしまったものである。普段は棚の上に並べているが、こうして手にとって遊ぶことを見つけてしまった。投資ゼロのこの遊び、しばらく続きそうである。

 

「石を立てる」のホームページ

QRPの面白さ

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MLA QRPでの庭先移動運用


HF帯の伝播はさまざまな条件が重なってミステリアスである。全く聞こえなかった局が微かに聞こえるようになり、それが波を打つように大きくなったり小さくなったり不安定な状態が続く。突然、すぐ近くから電波を出しているかのように、明瞭に大きく聞こえてくることもある。また、消え入るようにすーっと聞こえなくなることもある。
直進性の強いUHF等の電波では見通しでの伝播が基本であるので、アンテナの利得と送信電力にほぼ比例して伝播状況が変化する。しかし、HFでの伝播は電離層や地上等との反射や屈折などさまざまな経路で電波が伝わっていくので、機器の性能だけではない要素が大きく影響する。

私の運用スタイルは基本的にQRPという小電力で、アンテナもシンプルなものを使っている。機器の性能としては貧弱なのだが、それでも、伝播状況(コンディション)によって思いも寄らないところと交信できることがある。機器が貧弱だからこそ、コンディションへの依存が大きく、遠いところの局と交信できた時の喜びは大きい。自分の力に依るのではなく「運」に恵まれた「ラッキー」という喜びである。
今日の交信も、嬉しいものであった。いつも使っている机の上の無線機で数局と交信し、たくさんの局が聞こえていることを確認した。このコンディションならおもしろい伝播に出会えるかも知れないと、庭に出てみることにした。
用意したのは単三乾電池とほぼ同じ大きさの14500というタイプのリチウム電池2本を内蔵したトランシーバー。約8Vの電圧が得られ、出力は2W程度出せる。アンテナは同軸ケーブルを直径80cmに丸めて、その両端をキャパシタでつなげたエレメントに、20cmφほどのリングから給電するようにしたMLAという自作のアンテナである。
使用した周波数は7MHz帯で、波長は40mある。この電波を小さなアンテナに乗せるのだから効率がよいわけがない。それでも同調をとると多くの局が聞こえてくる。大きな音で聞こえる局に呼びかけてみるが、なかなか取ってもらえない。相手は数百ワットという大電力で大きなアンテナを使用している局なのかも知れない。そんな中で和歌山に移動していく局が聞こえてきた。移動局では50W以下の出力で、アンテナも簡易なもののはずである。呼びかけてみると応答があった。599ー599のレポートである。交信が成立したのである。
直径80㎝、地上高1mの小さなアンテナ、出力2Wという小電力でも430kmほどの距離を電波が飛んでくれた。思いがけない伝播に思わず笑みが浮かぶ。これだから無線はおもしろい。自然を相手にした最高の遊びである。

お手軽パドル

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お手軽パドル

 パドルと言うとカヌーで使われる水をかくための櫂を思い浮かべる方が多いだろう。しかし、今回製作したのはエレクトリック・キーヤーでモールス符号を生成するための装置である。単純に2つのスイッチで、モールス符号の短点(Dit)を送出するスイッチと、長点(Dah)を送出するスイッチを組み合わせたものである。
 モールス符号は短点と長点、そしてスペースを組み合わせてアルファベットやカナなどを送るものである。その長さの比率は短点を1とすると、長点は3、短点や長点の間隔は1、文字と文字の間隔は3、語と語の間隔は7と決められている。このタイミングに合わせて短点のスイッチと長点のスイッチを操作して符号を生成している。パドルは2つのスイッチを向かい合わせに設置して、通常、右のスイッチを押すと長点が出て、左のスイッチが押されると短点が出るようになっている。
 モールス符号を送出するために、この左右のスイッチを高速で操作するので、スイッチの押す間隔(ストローク)や押すときの硬さ・粘り強さ・反発力など使う人によって好みが分かれるところである。そのため、市販されているパドルはさまざまな調整機能が組み込まれ、使う人の好みに合わせられるようになっている。

 しかし、自分で使うパドルを作るなら、調整機能を組み込まなくても、製作の過程で使いやすくしてしまえばよい訳で、手軽にパドルを作ることが出来る。今回作ったのは基板垂直取り付けスペーサーというキューブ型のスペーサーを固定軸として、2枚のアクリル板を操作棹とし、その間にスイッチとなる金具を取り付けている。操作棹の間隔はキューブ型スペーサーの大きさで調整する。(8mmや10mmがある)スイッチの間隔は棹の間にある金具を前後に移動できるよう、基台に取り付ける穴を長円形に開けておき、締め付ける時に調整する。押すときの硬さ・粘り強さ・反発力はアクリル板の厚さや幅、長さで好みの状態を探せばよい。
 こうして出来上がったのが写真の「お手軽パドル」である。簡単な工作なので小一時間もあれば出来上がる。接点としているビスと金具の接触抵抗など厳密に考えれば課題となることもあるが、通常の使用では困っていない。自分だけの道具を自作するのは、案ずるより産むが易しのようである。

 

シンプルArduino

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シンプルArduino

 ArduinoはAVRマイコンを搭載し、入出力ポートを備えた基板である。一般的なものではUNOといわれる基板で、Atmega328Pというマイコンが搭載され、電源回路が組み込まれている。さらに、ほとんどのピンが外部に引き出されていて、水晶発振子によるクロック回路が組み込まれている。RS-232シリアル接続のためのチップも組み込まれていて、直接USB接続でPCと繋げることができる。開発環境としてArduinoIDEが提供されていて、C言語風のArduino言語によってスケッチというプログラムを組むことができ、その書き込みも一連の流れとして行うことができる。
 これまでPICを使ってきて、CやBasicなどでプログラムを書き、コンパイルしてHexデータを作成し、書き込み装置でPICに書き込む作業をしてきた。開発段階では何度もプログラムを書きかえるのだが、プログラムの変更からの一連の作業は結構手間がかかっていた。しかし、Arduinoの環境では、この作業が一つの纏まったものとなり、より作業がやりやすくなっている。また、提供されているUNOなどの基板では、入出力のピンが基板上にピンコネクタとして配置されているので、シールドという補助基板を親亀子亀形式で組むことにより動作確認がやりやすい。開発環境としてとても使いやすいものになっている。

 最初のうちは、これを動作の際にも使っていたのだが、基板に搭載されているシリアル接続の回路などは動作に使わないことも多い。また多くのピンがコネクタとして提供されているが、これも使わないものがほとんどである。動作環境としてはUNOなどの基板を使わなくても、もっとシンプルにAVRマイコンを中心にしたもので用が足りることに気付いた。
 スケッチを書き込んだAVRにクロックとしての水晶発振子を付けたシンプルなArduinoである。探してみると、そのような基板が市販されているのを見つけた。ほとんどAVRマイコンと同じ位の大きさで、回りに入出力ピンが配置されている。そこから必要なピンのみを接続して動作回路を組むことができる。シンプルArduinoを部品のように使う発想である。
 以前、Arduino UNOにシールドを組み合わせて構成していたモールス受信練習のCW_ Drillや、モールス送信練習用のCW_Decorderを、このシンプルArduinoを使って組んでみた。思いの外、容易に組むことができる。回路構成も分かり易い。

 開発にはUNOなどの提供されている基板を使い、動作させる段階ではシンプルAruduinoを使うのがよいようだ。マイコン工作にますますのめり込みそうである。